Yushiki

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8/20/2023, 6:05:08 AM

 青色。黄色。ピンク色。
 オレンジ。黄緑。紫。赤。
 白に黒に茶色やグレーまで。

 いつからだろうか。
 色んな色の小さな飴玉みたいなものがたまに空から降ってくるようになった。

 飴玉みたいなものは地面に落ちると、パァンと弾けて空気へ散る。別に色の跡がそのまま残るわけじゃなくて、本当にパッと消えるだけ。

 この不思議な空模様を最初はみんな不思議がっていたけど、今はもう慣れてしまったようにただ見てる。

 異常気象と騒がれて、連日テレビで放映されてたのが嘘のようだ。

 きっとこうして異常なものや不思議なものは、日常になっていくんだね。



【空模様】

8/19/2023, 4:37:08 AM

 どうしてかな。
 鏡の前で何度も確かめて。
 よし、この笑顔ならかわいいって。
 大丈夫だって。
 自分でも思えたはずなのに。

 人前に出ると、その自信が揺らいでくる。
 鏡の前で見た時と同じように。
 私はいま笑ってるはずなのに。

 相手の瞳に映る自分が見れなくて。
 つい目を下へ逸らしてしまうの。



【鏡】

8/17/2023, 11:29:49 PM

 普段は頭の片隅にもないのに
 何気なく掃除をしていたらふと目に入る
 もうこれは使ってもいないし
 別になくなったからって
 生活に支障を来すものではないのだけれど

 いざ手放すとなると
 どうにも心の奥に引っ掛かる

 そんなものばかりが
 押し入れにある
 箱の中に詰まっているのは

 私だけしか知らない



【いつまでも捨てられないもの】

8/17/2023, 4:40:54 AM

 ある国の王の前で4人の男が膝をついて畏まっていた。
 王はこの4人が先の戦で多大なる貢献をしたと聞かされ、それぞれに褒美を取らせようと思い呼び集めたのだ。

 1人は言う。わたしは多くの敵兵をこの手で打ち払い、戦いに勝利を収めました。
 1人は言う。わたしはたくさんの武器を作り上げ、戦況を有利にしました。
 1人は言う。わたしは屈強な兵士を幾人も育て上げ、戦場へと送りました。

 彼らの為しえた功績を王は順番に聞いていく。最後の1人の話に王が耳を傾けようとした時、最後の1人は言った。

「自国も敵国も関係なく、わたしは戦地でたくさんの負傷兵に治療を施しました──」

 最後の1人の言葉に、他の3人は驚いた。
 どうして敵側の人間まで助けたのだと、各々から疑問が上がる。

 最後の1人は静かに告げた。

「わたしはわたしの誇りを守るため、あの戦地に行ったのです。わたしのしたことをお認めできないのであれば、どうぞ褒美はなかったことに。わたしはそれで構いませんので」

 口を噤んだ3人に、最後の1人は一歩も引かなかった。思案した王は3人には褒美を取らせ下がらせた。最後の1人と二人きりになり、王は改めてその者に問う。

「お前はどの地へ行っても同じ事をするのか?」
「もちろんです」

 王はその者に褒美を取らせた。そして、もうひとつ、その者に命じた。

 この国に大きな病院を作れ。今や平和になろうとしているこの地に、かつての敵国だからといって、いつまでも憎しみを持つ者ばかりいては真の平和は訪れない。

 お前はその憎しみを晴らすための第一の礎となるのだ。

 最後の1人は深く頭を垂れると、自国の王に尊敬と誇らしさを持って了承した。



【誇らしさ】

8/16/2023, 3:50:28 AM

 怖いくらいに暗くなった海を
 浜辺に立ち尽くしながら眺めていた

 寄せて返す波の音が
 まるで誘うように耳奥に響くものだから
 ふと気を抜いたらあの夜の海へと
 溶け込んでしまいたくなるので

 わたしは慌てて
 足元まで迫っていた冷たい水から
 距離をとった



【夜の海】

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