Yushiki

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 ある国の王の前で4人の男が膝をついて畏まっていた。
 王はこの4人が先の戦で多大なる貢献をしたと聞かされ、それぞれに褒美を取らせようと思い呼び集めたのだ。

 1人は言う。わたしは多くの敵兵をこの手で打ち払い、戦いに勝利を収めました。
 1人は言う。わたしはたくさんの武器を作り上げ、戦況を有利にしました。
 1人は言う。わたしは屈強な兵士を幾人も育て上げ、戦場へと送りました。

 彼らの為しえた功績を王は順番に聞いていく。最後の1人の話に王が耳を傾けようとした時、最後の1人は言った。

「自国も敵国も関係なく、わたしは戦地でたくさんの負傷兵に治療を施しました──」

 最後の1人の言葉に、他の3人は驚いた。
 どうして敵側の人間まで助けたのだと、各々から疑問が上がる。

 最後の1人は静かに告げた。

「わたしはわたしの誇りを守るため、あの戦地に行ったのです。わたしのしたことをお認めできないのであれば、どうぞ褒美はなかったことに。わたしはそれで構いませんので」

 口を噤んだ3人に、最後の1人は一歩も引かなかった。思案した王は3人には褒美を取らせ下がらせた。最後の1人と二人きりになり、王は改めてその者に問う。

「お前はどの地へ行っても同じ事をするのか?」
「もちろんです」

 王はその者に褒美を取らせた。そして、もうひとつ、その者に命じた。

 この国に大きな病院を作れ。今や平和になろうとしているこの地に、かつての敵国だからといって、いつまでも憎しみを持つ者ばかりいては真の平和は訪れない。

 お前はその憎しみを晴らすための第一の礎となるのだ。

 最後の1人は深く頭を垂れると、自国の王に尊敬と誇らしさを持って了承した。



【誇らしさ】

8/17/2023, 4:40:54 AM