明日の天気は晴れるかな。
空を見上げて真っ先に思う。
明日が晴れれば良い気分。
曇りだとまあまあ。
雨だとちょっと憂鬱かな。
小雨くらいなら、いいんだけれど。
突然、ポケットに入れてあったスマホが鳴った。画面を見てみると彼からだった。
「はい、もしもし」
「ねぇ、いま何してた?」
「ベランダに出て空見てた」
闇色を視界に入れながらそう言うと、「俺も」と言葉が返ってくる。
「明日会うの楽しみだね」
私がそう返事をすれば。
「駅まで迎えに行くよ」と、彼が申し出てくれたので。
この空の向こうにいて、いま同じ空を眺めているだろう彼へ、「早く会いたいな」と告げた。
【空を見上げて心に浮かんだこと】
見果てぬ夢を抱くのは、もう終わりにしようと思う。
子供の頃は自分は何者にもなれるんだって、希望に胸を踊らせていたけれど。
実際はそんなことなどなくて。
ただただ平凡な、何気ない毎日を送っているばかりだ。
「今日はね、いっぱい外で遊んで楽しかったよ!」
けれど僕には、満面の笑顔の娘から聞かされる、彼女の夢の詰まったたくさんの日常があるから。
「今度はパパも一緒に遊ぼうね!」
終わりにした夢の続きは、思ってもみなかった形となって、また始まっていく
【終わりにしよう】
隣の人と手を繋ぐ。
その次の人がまた隣の人と手を繋ぐ。
そうしてその次の人も、その次の人も続いていき、何人も何人も隣の人と手を繋いでいく。
途中、どうしてもそりが合わなくて、互いに手を繋ぐことを拒否する人達が現れた。
それぞれの主張がぶつかり合い、どちらも一歩も引かないままだ。それに気付いた誰かが繋がっていた列から離れ、喧嘩をしている者同士の間に入る。
どうしたんだい? そんなに怒鳴り合って。
ああ、なるほど。君はこうしたいと思うのだけど、君は君で譲れない部分があるんだね。
仲裁者を挟んだ議論は続いた。いつの間にか手を繋ぎ合っていた全ての人達を巻き込んで、話し合いは広がっていった。
いったいどれくらいの時間を費やしたのだろう。果てしなく長い時間が過ぎていた。
けれどとうとう最後には、あんなに諍い合っていた者達が互いに納得しあい握手を交わした。
それはきっと、争う二人だけではどうにもできず、また仲裁を一番始めに買って出た彼だけではなし得ないものだった。
そうしてまた、隣の人と手を繋ぐ。
そしていつか、大きな輪になって。
世界がひとつになればいい。
【手を取り合って】
表裏一体なんだよ。
優越感も劣等感も、簡単に入れ替わる。
それってさ、すごく苦しいんだよね。
だって真逆な感情じゃん?
それがちょっとのことで表に出たり裏に返ったりするなんて、どれだけ心乱されてんだろうって思う。
ぶっちゃけ、疲れるよね。
そうは分かっていても、誰かと比べることをやめられない。
比べるのは昨日の自分と今日の自分だよって、よく言われるけどさ。
昨日の自分も今日の自分も嫌いなんだよ。
比べたっていいところが見つからないんだよ。
優越感も劣等感も、抱き続けるのは苦しいけどさ。
その苦しさの中でしか吐き出せない醜いものが、たまにあるから捨てられないんだよ。
【優越感、劣等感】
これまでずっと。
纏わり付いてくる君が嫌いだった。
一人にして欲しいのに。
君は僕を見付けると、どんなに遠くにいても駆け寄ってくる。
放っておいてほしい。
僕は一人でいるほうが好きだし。
他人といるのは煩わしくて、落ち着かないのに。
「どうして僕に近付くの?」
ある日、そう尋ねてみる。
君はあまり考え込む素振りもみせないで。
「だって君は、人の中に入るのがあまり好きそうではないから」
だから。
私から手を伸ばすの。
いつか君が誰かに手を伸ばしたくなった時。
すぐ届く距離に誰かがいたら、伸ばしやすいでしょう?
これまでずっと。
纏わり付いてくる君が嫌いだった。
一人にして欲しかったのだ。
僕は一人では生きられない弱い人間だから。
そんな自分が誰かに知られたらと思うと不安で、たまらなく思っていたのに、君はそんなこと大したことないみたいに言って笑う。
「私がね、これまでずっと、そうだったの」
一人ぼっちで居続けることを選んでいたの。
「けどね、一人だけ居てくれたんだよ。私に手を伸ばし続けてくれる人が」
だから。
今度は私がその一人だけになろうと思って。
だから。
これは私の自己満足な偽善なの。
だから。
君は私のことを嫌いでもいいんだよ。
ただ側にいることだけ、覚えていてくれれば。
これまでずっと。
頑張っていた君が。
一人でいたい時も、一人じゃないことを忘れないでいて欲しいから。
【これまでずっと】