目が覚める。
そこはいつもと同じ場所。
みなれた部屋に、みなれた家具。
ふとカーテンが開いていた窓の外。
向こう側に広がる景色も、いつものみなれた街並みの様子。
「おはよう」
誰ともなく呟いて、見慣れた世界の新しい日に、今日も出会えた奇跡へ感謝する。
【目が覚めると】
こっちに行けば安心なのに。
あなたはあっちに行きたいと言う。
私は、嫌だよ、怖いもん、と首を振るが、あなたは、大丈夫だから、と、何の根拠もなくそんなことを言い放ち、こちらへと手を差し伸べてくる。
私はおそるおそるその手を取り、あなたの言う通り、私が行こうと思っていたのと反対の方へ行ってみた。
途中、やっぱりこっちに来なければ良かったとか、あなたのせいで大変な思いをしているとか、後悔したり、八つ当たりしたりと、散々な時もあったけれど。
いつの間にか私はあの時は安心だと思っていた方向よりも、嫌で怖くて仕方のなかった方向へ、よく曲がるようになっていた。
あんなに嫌で怖かったのに。
今はあまりそうでもない。
きっとこんなふうにこれからも、誰かの力を借りたり、何かの影響を受けながら、私は嫌で怖かったことを、当たり前のように、嫌でも怖くもなくなっていくのかもしれない。
【私の当たり前】
太陽が沈む夕暮れ時。
街中に、ぽつり、ぽつり、と明かりが灯っていく。
家族が揃った光景に。
大切な人を迎えたのだろう誰かの日常に。
今日も僕は胸をほっこりさせて帰路に着く。
「おかえりなさい」
「ただいま」
そうして僕も。
そのほっこりする街の明かりの一部となった。
【街の明かり】
こんばんは。
今夜、大切な人に会えましたか。
私は残念ながら
遠距離中の彼氏とは
今月は会えずじまいです。
でも、一年もこの日を心待ちにしていたはずの
あなた達が出会えたのなら
私も幸せです。
どうか
その逢瀬を楽しんで。
私もまた大好きな人に会える日を願いながら
今日の星空を見上げます。
【七夕】
よっ。
元気か?
お前いっつもそれ食ってるよなー。
この前おまえがすすめてくれたマンガ、めっちゃおもしろかったわ。あれ、続きないの?
どうした? 落ち込んでんの?
俺でよければ話聞くぜ。
まあ、おまえって、そういうとこあるよなー。
俺は嫌いじゃないけどさ。
あれ、もうこんな時間か。
悪ぃ、長居しちまった。
それじゃあな、元気だせよ。
またなー。
ふと思い出すのはそんな他愛もない会話ばかり。
劇的な出来事も、熱い語り合いもあったわけじゃないし、もう会わなくなって久しいけれど。
それでも、やっぱり。
いつかまた思い出すのは、きっとそんな日々のこと。
【友だちの思い出】