こっちに行けば安心なのに。
あなたはあっちに行きたいと言う。
私は、嫌だよ、怖いもん、と首を振るが、あなたは、大丈夫だから、と、何の根拠もなくそんなことを言い放ち、こちらへと手を差し伸べてくる。
私はおそるおそるその手を取り、あなたの言う通り、私が行こうと思っていたのと反対の方へ行ってみた。
途中、やっぱりこっちに来なければ良かったとか、あなたのせいで大変な思いをしているとか、後悔したり、八つ当たりしたりと、散々な時もあったけれど。
いつの間にか私はあの時は安心だと思っていた方向よりも、嫌で怖くて仕方のなかった方向へ、よく曲がるようになっていた。
あんなに嫌で怖かったのに。
今はあまりそうでもない。
きっとこんなふうにこれからも、誰かの力を借りたり、何かの影響を受けながら、私は嫌で怖かったことを、当たり前のように、嫌でも怖くもなくなっていくのかもしれない。
【私の当たり前】
太陽が沈む夕暮れ時。
街中に、ぽつり、ぽつり、と明かりが灯っていく。
家族が揃った光景に。
大切な人を迎えたのだろう誰かの日常に。
今日も僕は胸をほっこりさせて帰路に着く。
「おかえりなさい」
「ただいま」
そうして僕も。
そのほっこりする街の明かりの一部となった。
【街の明かり】
こんばんは。
今夜、大切な人に会えましたか。
私は残念ながら
遠距離中の彼氏とは
今月は会えずじまいです。
でも、一年もこの日を心待ちにしていたはずの
あなた達が出会えたのなら
私も幸せです。
どうか
その逢瀬を楽しんで。
私もまた大好きな人に会える日を願いながら
今日の星空を見上げます。
【七夕】
よっ。
元気か?
お前いっつもそれ食ってるよなー。
この前おまえがすすめてくれたマンガ、めっちゃおもしろかったわ。あれ、続きないの?
どうした? 落ち込んでんの?
俺でよければ話聞くぜ。
まあ、おまえって、そういうとこあるよなー。
俺は嫌いじゃないけどさ。
あれ、もうこんな時間か。
悪ぃ、長居しちまった。
それじゃあな、元気だせよ。
またなー。
ふと思い出すのはそんな他愛もない会話ばかり。
劇的な出来事も、熱い語り合いもあったわけじゃないし、もう会わなくなって久しいけれど。
それでも、やっぱり。
いつかまた思い出すのは、きっとそんな日々のこと。
【友だちの思い出】
暗い夜闇に迷わぬように
僕らは揺るがないあの小さな輝きを
指標にして彼の道を進む
暗い夜闇で寂しくないように
僕らの頭上に散りばめられた
あの小さな星々へ
寄り添ってくれてありがとうと
笑いながら指を差す
きっとあの小さな星々の中にも
僕らと同じ夜空を仰ぐ誰かがいて
今夜もこちらを見上げて笑いながら
明日の日を思い旅をしている
闇の中にいる僕らだけれど
決してひとりぼっちじゃないんだと
星空の下で夜を想う
【星空】