幸せな物語をわざわざ用意する必要なんてありませんよ。
悲劇や困難だけ作っておけばいいんです。
あとは勝手にハッピーエンドを迎えます。
誰にでも愛される物語の主人公なら当然でしょう。
え?
主人公ではないキャラクターは、どうすればいいかって。
まったく何を仰いますか。
誰しもが人生という物語の主人公です。
幸せにならないわけがないじゃないですか。
【ハッピーエンド】
あなたに見つめられるとわたしの心は誤作動を起こす。
本当はもっとゆっくり話したいのに、見つめられると逃げ出したくなって、言葉が早口になってしまう。
言いたいことはたくさんあるのに、その半分も満足に伝えられなくなる。
どうすればいいんだろう。
誰か教えてほしい。
【見つめられると】
君と隙間なく
ぴったりと抱き合えば
僕の心は君となり
君の心は僕となる
まるで二つ合わさった
ひとつの大きな心臓のように
【My Heart】
あれもこれも欲しい。
そう思っていっぱいに詰め込んだ。
それでもまだ足りない。
どうしようと途方にくれていると、後ろから肩を叩かれた。
──どうしたんだい? そんなに荷物を詰め込んで。
──ああ、君か。いや、持ち物の用意をしているんだけど、どうにも色々足らなくて。
──もう君の荷物はパンパンじゃないか。
──でもないものがまだいっぱいあるんだ。現にほら、君はそれを持っているけど、僕は持っていない。これじゃあ何かあった時に困るだろ。
──では、こうしよう。君が困った時は僕の持ち物からこれを貸そう。だから、僕が困った時は君の持ち物を貸してくれ。
相手にそう言われて微笑まれたら、あんなに焦っていた気持ちがなくなり、肩がすうっと軽くなった。
【ないものねだり】
人参が好きじゃない。
ピンク色が好きじゃない。
外に出るのは好きじゃない。
人ゴミなんて好きじゃない。
でも。
君は食べることが大好きで。
もちろん人参も好きで。
淡いピンク色が好きで。
外出してショッピングに行くのも、映画を見に行くのも、遊園地に行くのも好きだから。
僕はけっきょく君が作った料理に入っている人参は食べるようにしているし、君が買ったピンク色のものが家に増えてもとりあえずは黙っているし、君と一緒に外出して人ゴミの中に行くことになっても頑張って我慢している。
別に僕はそれらのことが好きじゃないのに。
君といることは大好きだから。
【好きじゃないのに】