教室の片隅で。
その日彼女は一人だった。
窓際の一番後ろにある自分の席に座りながら。
やけに遠くを見るようにして空を眺めていた。
僕はそんな彼女の横顔を。
遠い距離から見遣り。
その瞳の奥に微かに揺れた静かな悲しみを。
秘かに読み取っていた。
僕はふと思って。
彼女に留めていた視線を彼女が見つめる空へと向ける。
窓の外には澄んだ青い空が。
突き抜けるようにどこまでも続いていた。
その途方もないほどの空の広さを見ていたら。
何故だか急に不安になって。
胸がぎゅっと締め付けられた。
もし彼女のなかに去来している感情も。
こんな形であるのなら。
勝手な都合ではあるけれど。
僕は彼女に寄り添いたいと思った。
【同情】
ぐしゃり、ぐしゃりと、枯葉を踏む。
苛ついた心を叩きつけるように、強く踏みつける。
おさまらない怒りはどうしようもなくて、あまりの悔しさと情けなさに涙まで滲んできた。
怒りの魔人と化した私が、傍若無人に闊歩する。それでも大地に敷かれた枯葉の絨毯は、ぐしゃり、ぐしゃりと、小気味よい音を鳴らし続けた。
頑張れ、頑張れ。
行け行け、GO、GO!
まるで荒んだ私の気持ちを、鼓舞するみたいに。
【枯葉】
遠くの地へと去る君へ。
君と過ごしたいくつもの日々が、僕の人生を色鮮やかなものへと変えました。
君と過ごした今日はもう帰らないけれど。
さようなら。
どうかお元気で。
そしていつかまた。
会う日まで。
【今日にさよなら】
あれ、いいな。あ、あれも好き。
これすごくかわいいし、これなんか逆に奇抜すぎてウケる。
彼女と一緒のショッピング。
僕の彼女は好奇心が旺盛で、いつも目にしたあらゆるものに興味を持つ。
これ終わったら前々から気になっていた中華のお店に行かない?
あ、でも、さっき見かけたイタリアンのお店も気になるな。
何事にも冷めていると他人から指摘される僕にとって、彼女のこのバイタリティは尊敬に値するほどだった。
「ねぇ、今日いっぱい連れ回しちゃうかもしれないけど、いいかな?」
「もちろん。どこへでもお供いたしますとも」
そう返せば、やったぁと彼女が手を叩く。
またお気に入りの店が増えちゃいそうと、満面の笑顔を溢す彼女の姿が、僕にとっての一番のお気に入りであることは内緒だ。
【お気に入り】
誰よりも君を想う。
君がいなくなった世界でこれからもまだ生きていくために。
そんな独り善がりを今だけは許して。
【誰よりも】