Yushiki

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教室の片隅で。
その日彼女は一人だった。
窓際の一番後ろにある自分の席に座りながら。
やけに遠くを見るようにして空を眺めていた。

僕はそんな彼女の横顔を。
遠い距離から見遣り。
その瞳の奥に微かに揺れた静かな悲しみを。
秘かに読み取っていた。

僕はふと思って。
彼女に留めていた視線を彼女が見つめる空へと向ける。
窓の外には澄んだ青い空が。
突き抜けるようにどこまでも続いていた。

その途方もないほどの空の広さを見ていたら。
何故だか急に不安になって。
胸がぎゅっと締め付けられた。

もし彼女のなかに去来している感情も。
こんな形であるのなら。

勝手な都合ではあるけれど。
僕は彼女に寄り添いたいと思った。



【同情】

2/20/2023, 1:30:45 PM