作品No.299【2025/01/24 テーマ:やさしい嘘】
※半角丸括弧内はルビです。
わかっていた。いつか、こうなることは、日々思い描きながら、私はあなたの隣にいたのだから。
ずっと一緒にいるなんて、無理なことだと、私には最初からわかっていた。それでも、信じていたかった。
こうなることは、わかっていたのに。
「ゆるしてほしい……」
私が、私自身の手で、あなたの命を奪ってしまった。もう戻らない、どうすることもできない、あなたの亡骸(なきがら)が、私の腕に残っている。
きっと、あなたはわかっていたのだろう。私に殺されるということを、予感していたのだろう。
耳に残るのは、私への恨みなど欠片もない、あなたの最期の言葉だった。それは、あなたの最期の嘘なんだろう。
美しいまま、綺麗なまま、私の中に残りたいからこそ吐いた——やさしい嘘なのだろう。
作品No.298【2025/01/24 テーマ:瞳をとじて】
瞳を閉じて——が、間違っている表現だと何かで見てから、この表現を使うのがこわくなった。
そりゃ、閉じるのは瞼で、瞳ではないことくらいはわかるけれど。
あの有名な歌がすきだから、それを全否定してしまうのは、なんだかこう……かなしいというか、寂しいというか、モヤモヤするんだ。
作品No.297【2025/01/23 テーマ:あなたへの贈り物】
私があなたに
贈れるモノはなんだろう
それは
あなたにとって
どれほどの価値をもつモノなんだろう
作品No.296【2025/01/21 テーマ:羅針盤】
方位を示してくれるのが
羅針盤
だけれど
私には不必要だろう
どちらが東か
どちらが西か
どちらが南か
どちらが北か
それがわからない私には
あってもきっと
役に立たない
ただクルクルと回すだけ
作品No.295【2025/01/20 テーマ:明日に向かって歩く、でも】
私は、生きている。今を、瞬間を、重ねて連ねて、ここにいる。
見えない明日に向かって、一瞬一瞬を生きている。そこに何があるかもわからないまま、自分のことも自分で決めきれないまま、ただ過ごしている。
この命が、終わるのが、尽きるのが、いつになるかもわからないのに。変わらない明日がずっとあると信じ続けたままで。
私は、明日に向かって歩いている。