作品No.299【2025/01/24 テーマ:やさしい嘘】
※半角丸括弧内はルビです。
わかっていた。いつか、こうなることは、日々思い描きながら、私はあなたの隣にいたのだから。
ずっと一緒にいるなんて、無理なことだと、私には最初からわかっていた。それでも、信じていたかった。
こうなることは、わかっていたのに。
「ゆるしてほしい……」
私が、私自身の手で、あなたの命を奪ってしまった。もう戻らない、どうすることもできない、あなたの亡骸(なきがら)が、私の腕に残っている。
きっと、あなたはわかっていたのだろう。私に殺されるということを、予感していたのだろう。
耳に残るのは、私への恨みなど欠片もない、あなたの最期の言葉だった。それは、あなたの最期の嘘なんだろう。
美しいまま、綺麗なまま、私の中に残りたいからこそ吐いた——やさしい嘘なのだろう。
1/24/2025, 2:43:19 PM