作品No.294【2025/01/19 テーマ:ただひとりの君へ】
私にとっては
きみが
ただひとりのきみだよ
この世界のどこにも
きみの代わりができる存在なんて
ありはしない
だから
後ろばかり見るのも
底ばかり見るのも
別にそれはいいけどさ
きみ自身のことも見てやってほしいな
作品No.293【2025/01/18 テーマ:手のひらの宇宙】
この手の中に、骨やら、血管やら、血液やら、神経やらが、通って、流れて、私を形作っている。
それはまるで、宇宙の神秘に似ているような。
なんて。
作品No.292【2025/01/18 テーマ:風のいたずら】
「やめなさい、マリー・バラッド!」
その声に、窓際の席のオレは目を覚ました。今は授業中、だが、つい居眠りをしていたようだ。
窓の外には、天然芝が引かれた実践授業用の訓練場がある。そこではちょうど、基礎クラスの授業が行われていた。
そして、まさにその渦中にいる人物を見て、オレは完全に覚醒した。
マリー・バラッド——問題児と名高い、オレの幼馴染みだ。実力も才能もあるのに、それをいたずらに使ったり、わざと暴発させたりと、色々やらかすから、彼女はずっと基礎クラスに留年している。ついた呼び名が、【万年基礎クラス】、【基礎クラスの守護神】、【学園一のいたずら姫】——である。
一体今回は何をしでかしたのか——そう思って目を凝らして、オレは事態を把握した。
訓練場の中心で、グルグルと渦を巻いて回転しているのは、竜巻だった。オレのいる四階の教室からも確認できるそれは、なかなかな大きさだった。
「聞いているの、マリー・バラッド!」
怒鳴られてなお消さないということは……これは、マリーお得意のいたずらのようだ。消せないわけではない。あえて、消さないでいるのだ。
そのとき、竜巻がグッと背を伸ばすように高さを増した。どうやら、マリーのいたずら好きが暴走しているらしい。
オレはため息を吐いて、スッと手を上げた。
「先生」
この学園で、マリーの暴走を止められる者は、少ない。それほどに、マリーは優れた魔法使いだ。もっとも、それをちゃんとしたことに使ってくれれば、だが。
「ちょっと、あれを止めてきてもよろしいでしょうか?」
オレなんかが出張らなくても、マリーは自分の力でなんとかできる——それがわかっているのに、オレはわざわざ名乗りを上げた。まるでそれが、課された義務かのように。
作品No.291【2025/01/17 テーマ:透明な涙】
涙が、透明じゃなく、いろんな色だったらおもしろいのに。
哀しい時の涙、悔しい時の涙、楽しい時の涙——その時々で違う色をしていたら、自分の感情も、他人の感情も、わかるんじゃないかな。
……知りたくなかったことも知っちゃいそうだし、知られたくなかったことも知られちゃいそうだけど。
作品No.290【2025/01/15 テーマ:あなたのもとへ】
あなたのもとへ飛んでいきたい
飛ぶための翼も
何もないけど