作品No.259【2024/12/15 テーマ:雪を待つ】
※半角丸括弧内はルビです。
雪が降るのを待っている。雪が降るのは、あの方がここへ来る合図だから。
あの方と逢えるのは年に一度、季節が変わるそのときだけ。決まって、あの方はここへ来る側、私はそれをお迎えする側——それが毎年繰り返されて、この国の季節は巡っていく。
風が急に冷たさを増した。凍えるような風が、次第に強さを増していく。赤や黄に色づいた葉が吹き飛ばされ、裸になった枝に花のように雪が咲いた。
「ああ、ついにいらしたのですね」
あたたかく穏やかな季節——秋はもうお仕舞い。私の役目はここまでだ。
吹雪(ふぶ)く雪はやがて、寒く静かな季節——冬を連れてくる。それを司(つかさど)る、あの方も一緒に。
作品No.258【2024/12/14 テーマ:イルミネーション】
※半角丸括弧内はルビです。
凝り性の夫は、この時期になるとイルミネーションの設置に全力投球する。正直、付き合わされるこっちはたまったもんではない。
電飾の設置の手伝いは、まだマシな方だ。厄介なのは、飾りの中でも主役に位置するだろうリースとツリーである。なにしろ、本物の、というか、生の、というか、植物が使われたものを飾りたがるのだ。去年など、「買うのももったいないし、麻知子(まちこ)がつくってよ」なんて言ってきたのだ。確かに私は、手先が器用なのを活かしてハンドメイドアクセサリーの製作と販売をしているが、それとこれとは話が違うし、そんなに私を巻き込まないでほしいと思う。それに、時期が終われば、リースもツリーも処分することになる。その手間も考えてほしい。
夫のことはすきだ。けれど、イルミネーションのことになると熱くなりすぎるのは、正直嫌いだ。楽しそうに飾り付けをするのを見ているのは、微笑ましいのだけれど。
街にイルミネーションが輝くのを見る度、憂鬱になる私がいた。
作品No.257【2024/12/13 テーマ:愛を注いで】
愛を注いでつくりあげた
はずの自分の愛し子達でさえ
簡単に
あっけなく
粗末に
その命を扱ってしまうのだから
自分の中の〝愛〟なんて
きっとその程度のモノだ
作品No.256【2024/12/12 テーマ:心と心】
くっつきすぎれば鬱陶しく
離れすぎれば寂しくて
だから
あなたの心を求めてみたり
私の心を渡してみたり
するのだろうか
作品No.255【2024/12/11 テーマ:何でもないフリ】
何もない
何でもない
そんなふうにあなたといるけど
私の中には今もまだ
あなたに付けられた傷が
残って 疼いて
騒いでいる
だからね
これは
何でもないフリ
してるだけ