作品No.259【2024/12/15 テーマ:雪を待つ】
※半角丸括弧内はルビです。
雪が降るのを待っている。雪が降るのは、あの方がここへ来る合図だから。
あの方と逢えるのは年に一度、季節が変わるそのときだけ。決まって、あの方はここへ来る側、私はそれをお迎えする側——それが毎年繰り返されて、この国の季節は巡っていく。
風が急に冷たさを増した。凍えるような風が、次第に強さを増していく。赤や黄に色づいた葉が吹き飛ばされ、裸になった枝に花のように雪が咲いた。
「ああ、ついにいらしたのですね」
あたたかく穏やかな季節——秋はもうお仕舞い。私の役目はここまでだ。
吹雪(ふぶ)く雪はやがて、寒く静かな季節——冬を連れてくる。それを司(つかさど)る、あの方も一緒に。
12/15/2024, 2:58:02 PM