作品No.229【2024/11/15 テーマ:子猫】
仔ネコを飼うことにした。特に理由はなかった。別にネコがすきなわけでもなかった。相棒として、何か動物を傍に置かなければならなくなり、それがたまたま道端で拾った弱々しい仔ネコだった——というだけだ。
それでも、一緒に過ごすうちに愛着が湧いた。大きく育っていくのを見て、私に懐くようになって、たまらなく嬉しくなった。
けれど、幸せは長くは続かなかった。
「これまで、か」
私は呟いて、今や立派に成長したネコを見つめる。その身体は、ライオンやトラよりも何倍も大きかった。
「お前には、つらい仕事をさせてしまうな」
にゃあ、と。野太い声でネコは鳴いた。
「私を、殺してくれるかい?」
私を魔女だと言い、その命を奪おうとする連中に殺されるくらいなら。共に日々を生きてきたネコに、私はその命を閉ざしてもらいたかった。
それが、残酷なことだと知っていても。
ネコがゆっくりと瞬きをする。そして、太い足が私の身体を押さえ付けてきた。ゆっくりと、ネコは体重をかけてくる。
「すまないな、こんな主人で」
特別な名前も付けてやらなかった。ずっと〝ネコ〟と呼び続けた。それなのに、私はこの子に、殺しをさせようとしている。それがどれだけ、この子の命を穢す行為か知っているのに。
「……」
いくら謝っても足りない——そう思う私の首に、ネコはゆっくりと口を近付けた。
作品No.228【2024/11/14 テーマ:秋風】
少しずつ 冷たさを増してきた風
季節はゆっくりと
冬へと変わろうとしているようだ
そろそろ扇風機も終わりかな
作品No.227【2024/11/13 テーマ:また会いましょう】
※半角丸括弧内はルビです。
「まったく」
私は、振り向く。そんな一動作でも、美しく優雅に、を心がけるのを忘れない。
「全然なっていませんわ」
私の視界に映るのは、倒れ伏して動かない男達。ざっと十人はいるだろうか。動かないが、全員死んではいない。命まで奪(と)るつもりは私にないのだ、当然気絶までに留めている。
「私に指一本触れられないばかりか、私一人に全滅させられるなんて、本当にがっかりですわ。もう少し骨のある方々かと期待していたんですのよ」
ここ最近、私を付け狙っている人達がいるのを知っていたから、どんな強者(つわもの)や猛者(もさ)かと思っていたのだ。それがまさか、女の私に軽々と倒される連中だなんて、期待外れもいいところだ。しかも、何人かは逃げ出してしまっている。叩きのめされる仲間を放置して、だ。
この私が誘拐されるかもしれない——なんて、ほんの少しドキドキしていたというのに。心身共に弱い男達が徒党を組んでいるだけのつまらない集団に、私は何を期待していたのだろう。
「本当に、期待外れですわ。がっかりです」
私は歩き出す。もう、この男達に興味など皆無だった。いや、完全に無くなった、というわけでもなかった。ほんの少し、まだ期待していた。
「もしまた私を狙うおつもりなら——そのときは、今よりも少しは、強さを身につけていらしてくださいね」
誰も私の言葉など聞こえていないだろう——そう思いながら、さらに言葉を紡ぐ。
「また会いましょう」
作品No.226【2024/11/12 テーマ:スリル】
スリルなんていらない
平穏無事な一日が日常であればいい
変わったことなんて
起きない方がいい
そう思うのに
変わらない
変わり映えしない
日常が物足りないなんて
ワガママだよね
作品No.225【2024/11/11 テーマ:飛べない翼】
空を見上げた。
煌々と月が輝く空を切るように、仲間達が翼を広げて飛んでいる。美しい色が、月光を反射して、視界を彩っていた。
自分だけが、地べたに座り込んでいる。仲間達を見上げることしかできない。
仲間達と同じように、自分にも翼はあるのに。
飛べない自分がひとりきり、ただ夜空を見上げ続ける。