作品No.224【2024/11/10 テーマ:ススキ】
大学生のとき、実習でフィールドワークをした。
そのとき、ススキ、というか、イネ科の植物に寄生するナンバンギセルという植物があると教わった。宿主の養分を吸って生き、その宿主が枯れたときはその生を共に終える……らしい。
なぜかそれに、ものすごく、心惹かれたのを憶えている。
自分の力で生きていくよりも、誰かに養ってもらって生きていく方が自分に合っているように思うからだろうか。
当時もうっすら思ったことだが、なんともまぁ……よろしくないというか、だめというか、しょうもない思いを抱いたものである。
作品No.223【2024/11/09 テーマ:脳裏】
脳裏に焼きついて離れない
あの景色
あの歌
あの本
あの絵
あの人
記憶にあるのに思い出せない
あれやこれや
作品No.222【2024/11/08 テーマ:意味がないこと】
きみが私を見てくれないなら
きみが私を愛してくれないなら
私がきみを見ていることも
私がきみを愛していることも
全部全部
意味がないことだ
作品No.221【2024/11/07 テーマ:あなたとわたし】
※半角丸括弧内はルビです。
「いやー、ほんと助かるわ。ありがとな、莉胡(りこ)」
そう言って、ニカッと笑うスミに、わたしはドキリとする。それを顔に出さないよう努めながら、
「こんな調子で大丈夫? スミが行きたい高校、これよりだいぶ難しいと思うよ?」
と、少し厳しく言った。実際、スミが行きたいと公言している高校は、わたしが行きたいと思っている高校よりも難度はだいぶ上だった。それこそ、スミの今の実力では、到底合格など叶わないくらいには。
「マジかよー。オレ、国語マジで苦手なんだけど」
「国語と数学の点数差ひどいもんね、スミは」
言いながら机に突っ伏すスミに、わたしはそう声をかける。彼に言わせると、漢字の読み書きも、登場人物の心情を読み解くのも、説明文の一番言いたい重要なことをさがすのも、二百字以内で意見文を書くのも、超難解な問いらしい。
「その点、莉胡はどの教科も点数いいよな。あと、教え方も上手い! マジ感謝!」
「ありがと。でも、これで満足するのは早いよ、スミ。……行きたいんでしょ?」
一度言葉を止める。わたしの中で、スミに見えない決意を固めるために。
「季胡(きこ)と、同じ学校に」
「おうよ! 決まってんじゃん!」
目をキラキラと輝かせて宣言するスミは、とても眩しい。直視できないくらいだ。
いっそ、無関係だったらよかったのに。
「なら、もう少しレベル上げないとだね」
「うぇー。それマジで言ってる?」
「当然」
スミがずっと、季胡を見てるのを知っている。スミにとってわたしはずっと、〝教えるのが上手い同い年の幼馴染み〟で〝すきな人の妹〟だ。どれだけわたしが近付こうとしても、スミには近付けなかった。
だから、わたしは決めたのだ。
「ほら、もっかい過去問やろう。わたしも一緒にやるし」
あなたとわたし——交わらない二人が、もうすぐ離れ離れになる。その真意を、あなたが知ることはないままに。
作品No.220【2024/11/06 テーマ:柔らかい雨】
ただ降り続ける雨。
大きな音を立てるわけでもなく、静かにただ降り注いでいる。まるで、私を包み込むように。
いっそのこと、叩きつけるくらい降ってくれたら。そして私を壊してくれたら。
この胸に渦巻く感情も消えてくれるだろうか。