作品No.79【2024/06/18 テーマ:落下】
ひたすらに
落ちていく
どこに辿り着くのかも
わからないまま
身動きすら
取れないまま
ただ 落ちていく
自分では
どうしようもないほどに
落ちて
落ちて
這い上がることも
上に飛ぶことも
思いつくこともできぬまま
どこまでも
落ちていく
作品No.78【2024/06/17 テーマ:未来】
未来なんてわからない
ほんの少し先のことすら
わからないんだから
だから
未来なんて考えたくない
この先どうしたいかなんて
この先どうなりたいかなんて
難しいこと
ぐちゃぐちゃ
ごちゃごちゃ
考えたくない
その場しのぎで構わない
〝今〟を重ねて 生きていきたい
作品No.77【2024/06/16 テーマ:1年前】
一年前の今日
を
思い出そうとして
日記アプリを見てみた
正直
思い出したくないことを
バカ正直に書き残していて
見なきゃよかったと思った
一年後
もし今日を思い出すとして
私は何を憶えているだろうか
作品No.76【2024/06/15 テーマ:好きな本】
すきな本を訊かれたら、私は迷うことなく、ジーン・マセイさん作、エイドリアン・アダムズさん絵、おおいしまりこさん訳の『やさしい魔女』と答えます。
私とこの絵本の出逢いは、おそらく小学生のとき。母が、地元の図書館で借りてきた絵本でした。はじめは、濃いオレンジと黒と白という地味な色使いと、あまりかわいいと思えない絵がこわくて、興味をそそられなかったのを憶えています。そんな絵本を、寝る前に母が読み聞かせてくれたのですが、私は物語が進むにつれ、その絵本に引き込まれました。
『やさしい魔女』は、新米魔女・リトルの初めてのハロウィーンの夜を描いた絵本です。ハロウィーンの夜、魔女達は月に向かって箒に乗って競争します。そして、その競争で一番になった者には、とびきりの蜘蛛の巣のベールが賞品として贈られます。リトルも「一番になってやる!」と意気込むのですが、上手く飛べないし、イタズラはできないし、助けようと思って声をかけた男の子には怯えられてしまうしで、失敗ばかり。リトルは、魔女失格だと落ち込んでしまいます。そんなリトルに、奇跡が起こり、タイトルにもなっている〝やさしい魔女〟と結びつくのですが——ネタバレはしたくないので、このへんでやめておきましょう。
とにもかくにも、失敗続きで何をやっても上手くいかないリトルに、幼い私は感情移入したのでしょう。いつの間にか、その目には涙が溢れ、泣き出してしまっていました。そんな私を見て、母は「この絵本を買ってあげよう」と思ったのだそうです。
しかし、そこで問題が起こりました。
この絵本を出版していた新世研という会社が、このとき既に倒産していたのです。母は、知り合いの書店員さんにダメ元でこの絵本がないか訊いてみたのだそうです。そして、その書店に残っていた最後の一冊を、私のために手に入れてくれました。
私にとって、この絵本は、初めて涙を流すほど心を揺さぶられた、大切な絵本です。この絵本との出逢いは、今でも大切な思い出です。
この絵本に携わって世に出してくださった方々、この絵本を所蔵してくれていた地元の図書館、そして、この絵本を手に取って私達に読み聞かせてくれた母に、感謝の気持ちでいっぱいです。絵本にしては文字の量も多い方なので、私が思う以上に、読み聞かせるのは大変だったろうと思います。
『やさしい魔女』に出逢えたことは、きっと私の幸福です。
作品No.75【2024/06/14 テーマ:あいまいな空】
※半角丸括弧内はルビです。
どんよりと曇っているくせに、今にも雨が降り出しそうな色のくせに、降る気配のない雨。そんな空を見上げて、あたしは舌打ちをした。
「凛星(りほ)ー? 帰らないのー?」
「カフェ行こーよー」
友人二人が呼ぶけれど、なんだかやる気がしない。
「今日はいいかな。先帰っていいよ」
「おっけー」
「じゃねーん」
気を害すこともなく、友人二人は帰っていく。私のこういう態度にも慣れっこだからだろう。
本当は、カフェに行くつもりだった。お気に入りのカフェ——ささ屋。雨の日には、雨の日限定のパフェが出る。今の時期だと、紫陽花みたいな青色や紫色のゼリーが入った、キラキラのパフェだ。あたしはそれがだいすきで、雨の日はささ屋を訪れるのが楽しみだった。
「こんな天気じゃ、あのパフェないだろうな……」
呟いてあたしは、雨が降りそうで降らないあいまいな空から目を逸らした。