作品No.75【2024/06/14 テーマ:あいまいな空】
※半角丸括弧内はルビです。
どんよりと曇っているくせに、今にも雨が降り出しそうな色のくせに、降る気配のない雨。そんな空を見上げて、あたしは舌打ちをした。
「凛星(りほ)ー? 帰らないのー?」
「カフェ行こーよー」
友人二人が呼ぶけれど、なんだかやる気がしない。
「今日はいいかな。先帰っていいよ」
「おっけー」
「じゃねーん」
気を害すこともなく、友人二人は帰っていく。私のこういう態度にも慣れっこだからだろう。
本当は、カフェに行くつもりだった。お気に入りのカフェ——ささ屋。雨の日には、雨の日限定のパフェが出る。今の時期だと、紫陽花みたいな青色や紫色のゼリーが入った、キラキラのパフェだ。あたしはそれがだいすきで、雨の日はささ屋を訪れるのが楽しみだった。
「こんな天気じゃ、あのパフェないだろうな……」
呟いてあたしは、雨が降りそうで降らないあいまいな空から目を逸らした。
6/14/2024, 2:59:35 PM