「助かった、ほんとにありがとう」
忙しそうだから、手伝った。それだけだった。
彼ははにかんだ笑みを私に見せた。
その瞬間、身体に熱を感じた。
太陽の日差しが強いから?
顔を見られて恥ずかしかったから?
――彼の笑顔が、陽のように眩しかったから?
ううん、と小声で言い、ぱっと背を向ける。
視線の先には窓があり、私と彼を映していた。
彼が荷物を置き、友達と話していた。そこが私だったら、と思った。
今の世界は、モノクロが少し色づいたように見えた。
「運命の人って、いるのかなあ」
小指に赤い糸が結ばれているのが見えたら、と思う。
私の片思いの相手かもしれないし、神のさだめで決まった人かもしれない。
でも、そんな人は私になんてできない。
そんな現実を映したくない。
でも、そうだから。
容姿は良くないし、言葉遣いも悪いし、私が一番嫌いなのは声。
先生や先輩とか、距離が離れてる人には、声のトーンが高くなる。無意識で。
一方で、仲が良かったり、心を開いている人には、私の素の声、低い声が出る。
声が前より低くなっていたら、私に信頼されてる証拠だって、思ってくれればいいけど。
「入道雲だ」
部活の帰り、1人で歩いている狭間に、空を見上げた。
遠くに沢山連なっている入道雲が見える。
私は夏の風物詩だと感じているけど、みんなはどうなのかな。
入道雲って、The青春、って感じがする。今のこと…?笑
確か入道雲って、大雨が降る…んだっけ?わかんないや…。
考えると、未来の不安が大雨で降ってきた。
傘をさして、濡れないようにしなきゃ。
「暑いー!!!気持ち悪いよっ……」
夏は嫌いだ。
日焼けするし、夏休みも休めないし、部活もできない、プールも泳げないから、尚更。
海も濡れたあとの気持ち悪さが堪らないから、苦手だ。
それでも、最近休日の朝だけ、毎日続けていることがある。
30分くらいかけて、いつもは行かない場所を歩くこと。
楽しいし、自然も多いし、知らなかったところが知れて嬉しい。
あと……
貴方に会いたいってのも、あるかもね?