世界のおわり

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2/28/2026, 11:40:17 AM

《現実逃避》
不自由ない生活を送ることが出来て、自分の命が他の人より価値がある代償に、僕の生の終わりを望む人は続くことを願う人よりも多い。
僕の生は沢山のひとの命と屍の上に成り立っている。
命を脅かされる度に何度でも逃げ出したいと思った。
でも、その度に僕の料理を食べて動かなくなった人が、
僕を守って赤い水溜まりを作った人が、僕に手を伸ばして、足を掴んで離さない。
僕は『偶然』で命を落とす他にこの命の価値を変えることは許されない。



だけど、夢をみることぐらいなら、許してくれるよね。
僕が僕を守ってくれた命に押し潰されそうになった時、僕と秘密で友達になってくれたひーくんとひそひそと内緒話をする。
内緒話の中の僕はただの何処にでもいる子で、学校に行ったり出来たてのアイスを食べたりして、誰かの悲鳴が響くこともなく、赤い水溜まりをみることもなかった。

いつもこの内緒話を始まる前に、ひーくんは「ひーくんと一緒に逃げちゃおうよ」と手を差し出してくれる。
そんなこと出来るはずがないことは、言っているひーくんもわかっているだろう。
でもその言葉に何回も救われた。


そしてまた今日も、差し出された手をとる。
そして叶わぬもしもを口にする。


「ひーくんに会って頑張ったねって言ってもらって、また内緒話をするんだ」


もしも僕が普通の子だったら、ひーくんは今日も一緒に内緒話してくれたのかな。






2/27/2026, 9:35:24 AM

<君は今>
もう、声も思い出せない君へ君は今どこで何をしているのだろうか。
お腹は空かせていないだろうか。
何にも脅かされず損なわれずしあわせに日々を過ごしているだろうか。
不思議だね。
君が誰かも分からないのに、君がしあわせなら僕はもう何もいらないんだ。

2/6/2026, 7:04:28 AM

《溢れる気持ち》
お前のお陰でここまで来れたんだ。
この溢れる気持ちをどう届けようか。


僕は君にとって一番の演出家なのだから、僕にとって一番のスターである君が世界へ羽ばたく門出を僕に出来る最高の演出で送り出さねば、僕の名前が廃るというもの。



……本当は、ずっと僕が君の演出家でありたかった。
ずっと二人でショーを作っていたかった。
君と二人で作り上げたショーが僕の人生での一番の輝きだから。
でも、君は僕の一番のスターで終わるべき男じゃない。
僕にはまだ、君を世界のスターにする力がないし、そうなるまでまだまだ時間がかかる。
だから、君を先に世界へ送り出す。
僕にきちんと君をスターにする力がついたら、また、僕を君の演出家にさせてくれ。

「絶対そっちにいくからまっててよ」
「あぁ、待っている」

その言葉だけで、僕は頑張れる。
僕の最高のスターへ、僕の今出来る全てを捧げるよ。

2/2/2026, 3:16:03 PM

《勿忘草》
いつまでも一緒にいられたらいいよね。
そう互いに約束したのは良かったのだけれど。
君はこの国の兵士で、私は潜入している諜報員だ。
家族で諜報をしているから、ハイスクールの時に任務を与えられてこの国で遂行し始めた。
私の願いはただひとつ。
君ともう少しだけただの友人として一緒に居させて欲しいということだけだ。
どうか、私に帰国命令が下されませんように。
この国で戦争が起こることがありませんように。
一生、私をただの人として、思ってくれますように。


まぁ、幼い頃から作戦に従事していたのだ。
直接では無いもののたくさんの人を不幸せにしてきた、血を流させた私の願いは叶えられることはなかった。
君と出会った十年後、私は帰国を命じられた。
私が属する国と君の国との間で戦争が勃発してしまった。
私は徴兵されて、せめて君と戦場で出会わないようにと願った。
君が生き抜けるように祈った。
のに、神という奴がこの世に存在するなら、余程酷いらしい。

君と戦場で再会してしまった。
一目で君と分かってしまった。
私は変装が得意だったから。
歩き方や、体の動かし方の癖で分かってしまった。



出会ってしまったのならば、殺し合わなければならない

君も本気で来るだろうし、私も私に施された教育が手加減することを許さなかった。
君との戦闘は長期戦に持ち込まれると圧倒的にこちらに分が悪い。
どうここを考えを巡らせつつ君の攻撃を避けていると、君は私の君といたときに使っていた偽名を呼んだ。
一瞬、大きな隙を作ってしまった。
私は今素顔だ。
君と会う時は変装をしていて歩き方なども変えていたのに。
なんで。

君も私の隙が分かったようで、攻撃を辞めてしまった。
「なんでわかった」と聞くと
「ただの勘」だと自信満々に言うものだから、君と居た時ぶりに心の底から笑ってしまった。
「私じゃなかったら危なかったぞ」

本当に私だとバレたくなかった。
戦場にやっと慣れたであろう君に不要な傷をつけたくなかった。
そのような私情が任務中に入る時点で私は諜報員失格というものである。
普通に全力で戦っても負けるのならば、どちらにしろ、同じことではないのか。
ふと魔が差してしまった。
任務に忠実であることを叩き込まれて今まで生きてきたが、最期になるくらいなら、もうただの人間になってもいいのではないか。
白状しよう。
私は君が傷つくのが本当に我慢ならない。
心に深い傷を残していくであろう自分さえ、心底嫌いになる。


ただ、その反面、君の傷になれることが私は嬉しい。
私はとても心が狭い人間である。
間違っても私を忘れて幸せに生きろなんて思えない。
私の存在を脳裏に刻み込め。
俺という、諜報員として本来存在してはならない、本当の素の私を。

わすれないで


優しい君なら、覚えていてくれるだろう。
だから、意地っ張りな俺は本心とは真逆のことを言う。

「君を恨まないよ。俺のことは忘れて幸せになってね」


最期に見たきみは、俺の存在が刻み込まれたような、酷い顔をしていた。




1/31/2026, 4:44:33 AM

《あなたに届けたい》
早く、早く、早く。
早くあの方の元へ。
休んでる間などない。
うかうかしていたら間に合わなくなる。
あなたに届けたいことがあるのです。
あなたは、確かに愛されていたのです。



そうでなければ、あなたはここまで生きてくることはできなかった。
あなたは要らない子ではなく、確かに愛されていました。
どうか、どうか。
そのままいかないで。
愛されないままだと思わないで。
生まれた時から疎まれたまま、そのままいかないで。
確かにあなたが愛されていたその証拠を、あなたの元へ。


全ての事実を隠し通されていなくなるあなたへ。
一つくらいは真実を。


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