《現実逃避》
不自由ない生活を送ることが出来て、自分の命が他の人より価値がある代償に、僕の生の終わりを望む人は続くことを願う人よりも多い。
僕の生は沢山のひとの命と屍の上に成り立っている。
命を脅かされる度に何度でも逃げ出したいと思った。
でも、その度に僕の料理を食べて動かなくなった人が、
僕を守って赤い水溜まりを作った人が、僕に手を伸ばして、足を掴んで離さない。
僕は『偶然』で命を落とす他にこの命の価値を変えることは許されない。
だけど、夢をみることぐらいなら、許してくれるよね。
僕が僕を守ってくれた命に押し潰されそうになった時、僕と秘密で友達になってくれたひーくんとひそひそと内緒話をする。
内緒話の中の僕はただの何処にでもいる子で、学校に行ったり出来たてのアイスを食べたりして、誰かの悲鳴が響くこともなく、赤い水溜まりをみることもなかった。
いつもこの内緒話を始まる前に、ひーくんは「ひーくんと一緒に逃げちゃおうよ」と手を差し出してくれる。
そんなこと出来るはずがないことは、言っているひーくんもわかっているだろう。
でもその言葉に何回も救われた。
そしてまた今日も、差し出された手をとる。
そして叶わぬもしもを口にする。
「ひーくんに会って頑張ったねって言ってもらって、また内緒話をするんだ」
もしも僕が普通の子だったら、ひーくんは今日も一緒に内緒話してくれたのかな。
2/28/2026, 11:40:17 AM