狭い裏路地を早足で通り過ぎる
ここを抜ければ
あいつに会わなくてすむ
そう思い
歩む速度を更に速めた
あと少し
少し広げた空間に出る
今夜は満月
街灯がなくても
月に照らされ
進む道も見えやすい
空間の真ん中に人影を見つけ
足を止めた
せっかく撒いたと思ったのに
あいつはにやりと悪い笑みを浮かべ
“やぁ、また会ったね”
そう言った
『最悪』より
私は世の理を
幼心から理解していたわ
花が咲き枯れるように
命の芽吹き
その終わり
過去から未来
世の流れ、理が手に取るように分かるの
だから
誰に気づかれることなく
私は私の道を遮るもの全て
取り除くことができたわ
そう
あなたのように感がいい人もいたけど
私を止めることは
できなかった
ふふふ
別にいいのよ
知られたくないとかではないの
だって
知られたところで
この世界から退場してしまえば
この事を知る人はいなくなるでしょう?
さぁ、お話はここまで
大丈夫
怖くないわ
暗くなるだけ
すぐに何も分からなくなるわ
そう、
そこのあなたもすぐ迎えに行くわ
『誰にも言えない秘密』より
正直
なんで生きているのか
分からない
なぜ思考できるのか
分からない
視えているもの全てが
本当に全て“その通り”に
視えいるのかも
分からない
子孫を残すことを
“種の保存”というが
何に対して
何故
保存するのか
分からない
正直
この世界で
生きているのに
知らないことが多すぎる
『正直』より
雨がしとしと降ってきた
いえ
サーサーかな
そう思っている間に
ざあざあ降ってきた
色鮮やかな紫陽花の上を
雨粒たちは
ぴょんぴょん飛び跳ねる
ぴょんぴょんぴょんぴょん
飛び跳ねる
紫陽花たちも嬉しそうに
器いっぱいに雨を抱き込んで
その色を一層輝かせている
『梅雨』より
“風、気持ちいいね”
彼女は麦わら帽子を片手で押さえながら
そう言った
“本当だね。暑くなるかなと思ったけど、ちょうど良
い気温で良かったよ”
僕は彼女の横に立った
手に汗を掻きながら
僕は次に話したい内容を頭の中で何度も唱えていた
“あのさ‼︎”
“ん?どうしたの?”
そう言って君は振り向いた
“そのさ、こ、、、この近くに美味しいソフトクリー
ムが売ってるんだって‼︎”
“食べに行かない?”
君は一瞬きょとんとした顔になった後
“いいね‼︎ちょうど食べたいって思っていたところなん
だ‼︎”
とにこりと笑い、僕の腕を引っ張った
違う‼︎そうじゃない‼︎そうじゃないんだ‼︎
そう思い、彼女の腕を引っ張り返した
“あの‼︎”
“ん?”
“その、、、
今日、、、
本当にいい天気だね、、、”
“うん。本当に良かったよ”
ちが〜〜〜う‼︎そうじゃない‼︎
本当にそうじゃない‼︎
『天気の話なんてどうだっていいんだ。
僕が話したいことは、、、』より