まる猫

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6/6/2023, 11:55:54 AM

 狭い裏路地を早足で通り過ぎる

 ここを抜ければ

 あいつに会わなくてすむ

 そう思い

 歩む速度を更に速めた

 あと少し

 少し広げた空間に出る

 今夜は満月

 街灯がなくても

 月に照らされ

 進む道も見えやすい

 空間の真ん中に人影を見つけ

 足を止めた

 せっかく撒いたと思ったのに

 あいつはにやりと悪い笑みを浮かべ

 “やぁ、また会ったね”

 そう言った

                   『最悪』より

6/5/2023, 2:32:43 PM

 私は世の理を

 幼心から理解していたわ

 花が咲き枯れるように

 命の芽吹き

 その終わり

 過去から未来

 世の流れ、理が手に取るように分かるの

 だから

 誰に気づかれることなく

 私は私の道を遮るもの全て

 取り除くことができたわ

 そう

 あなたのように感がいい人もいたけど

 私を止めることは

 できなかった

 ふふふ

 別にいいのよ

 知られたくないとかではないの

 だって

 知られたところで

 この世界から退場してしまえば

 この事を知る人はいなくなるでしょう?

 さぁ、お話はここまで

 大丈夫

 怖くないわ

 暗くなるだけ

 すぐに何も分からなくなるわ

 そう、

 そこのあなたもすぐ迎えに行くわ
 
            『誰にも言えない秘密』より

6/3/2023, 6:20:10 AM

 正直

 なんで生きているのか

 分からない

 なぜ思考できるのか

 分からない

 視えているもの全てが

 本当に全て“その通り”に

 視えいるのかも

 分からない

 子孫を残すことを

 “種の保存”というが

 何に対して

 何故

 保存するのか

 分からない

 正直

 この世界で

 生きているのに

 知らないことが多すぎる

                   『正直』より

6/2/2023, 3:34:48 AM

 雨がしとしと降ってきた

 いえ

 サーサーかな

 そう思っている間に

 ざあざあ降ってきた

 色鮮やかな紫陽花の上を

 雨粒たちは

 ぴょんぴょん飛び跳ねる

 ぴょんぴょんぴょんぴょん

 飛び跳ねる

 紫陽花たちも嬉しそうに

 器いっぱいに雨を抱き込んで

 その色を一層輝かせている

                   『梅雨』より

5/31/2023, 12:09:25 PM

 “風、気持ちいいね”

 彼女は麦わら帽子を片手で押さえながら

 そう言った

 “本当だね。暑くなるかなと思ったけど、ちょうど良
 い気温で良かったよ”

 僕は彼女の横に立った

 手に汗を掻きながら

 僕は次に話したい内容を頭の中で何度も唱えていた

 “あのさ‼︎”

 “ん?どうしたの?”

 そう言って君は振り向いた

 “そのさ、こ、、、この近くに美味しいソフトクリー
 ムが売ってるんだって‼︎”

 “食べに行かない?”

 君は一瞬きょとんとした顔になった後

 “いいね‼︎ちょうど食べたいって思っていたところなん
 だ‼︎”

 とにこりと笑い、僕の腕を引っ張った

 違う‼︎そうじゃない‼︎そうじゃないんだ‼︎

 そう思い、彼女の腕を引っ張り返した

 “あの‼︎”

 “ん?”

 “その、、、
 今日、、、
 本当にいい天気だね、、、”

 “うん。本当に良かったよ”

 ちが〜〜〜う‼︎そうじゃない‼︎

 本当にそうじゃない‼︎
 
『天気の話なんてどうだっていいんだ。
          僕が話したいことは、、、』より

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