正直
なんで生きているのか
分からない
なぜ思考できるのか
分からない
視えているもの全てが
本当に全て“その通り”に
視えいるのかも
分からない
子孫を残すことを
“種の保存”というが
何に対して
何故
保存するのか
分からない
正直
この世界で
生きているのに
知らないことが多すぎる
『正直』より
雨がしとしと降ってきた
いえ
サーサーかな
そう思っている間に
ざあざあ降ってきた
色鮮やかな紫陽花の上を
雨粒たちは
ぴょんぴょん飛び跳ねる
ぴょんぴょんぴょんぴょん
飛び跳ねる
紫陽花たちも嬉しそうに
器いっぱいに雨を抱き込んで
その色を一層輝かせている
『梅雨』より
“風、気持ちいいね”
彼女は麦わら帽子を片手で押さえながら
そう言った
“本当だね。暑くなるかなと思ったけど、ちょうど良
い気温で良かったよ”
僕は彼女の横に立った
手に汗を掻きながら
僕は次に話したい内容を頭の中で何度も唱えていた
“あのさ‼︎”
“ん?どうしたの?”
そう言って君は振り向いた
“そのさ、こ、、、この近くに美味しいソフトクリー
ムが売ってるんだって‼︎”
“食べに行かない?”
君は一瞬きょとんとした顔になった後
“いいね‼︎ちょうど食べたいって思っていたところなん
だ‼︎”
とにこりと笑い、僕の腕を引っ張った
違う‼︎そうじゃない‼︎そうじゃないんだ‼︎
そう思い、彼女の腕を引っ張り返した
“あの‼︎”
“ん?”
“その、、、
今日、、、
本当にいい天気だね、、、”
“うん。本当に良かったよ”
ちが〜〜〜う‼︎そうじゃない‼︎
本当にそうじゃない‼︎
『天気の話なんてどうだっていいんだ。
僕が話したいことは、、、』より
何故私だけ
どうして
分からない
分からなすぎて
吐き気がする
そう思っていた時があった
何をしても上手くいかず
他の人は簡単に飛び越えていくような錯覚に陥る
だから
ただただ闇雲に走り続けた
何が正しく
何が間違いなど考えることもなく
ただ走り続けた
振り返るのが怖かった
でも、今になって思う
私も他人も人間だ
同じように間違えるし、躓く
勝手に壁を作り
耳を塞いでその場をやり過ごす
そして「私だけが」と嘆く
そんな事をしてもなにも変わらない
怖い時ほど立ち止まり
しっかりと“それ”を見定める
すると不思議な事に怖く無くなる
年齢を重ねていても、私より若くても
それは人間なんだ
本質さえ見失わなければ
世界が広がる
世界が広がれば
私も変わる
『ただ、必死に走る私。何かから逃げるように』より
気がつけば立葵が咲いていた
もうそんな時期か
どおりで最近蒸し暑い日が続くわけだ
僕はじとっとかいた汗を
乱雑に拭った
夏の始まりを告げる花
箪笥の中にどのくらい夏用の服があったか
思い出す
あ〜ぁ
また暑さとの戦いが始まるのか
天へ向け咲き始めた立葵を横に
止めた足を前へ進めた
『半袖』より