『雨音に包まれて』
今日も雨。
気持ちは憂鬱。ジメジメとした空に悪態をつく。
雨のせいで気分も落ち込む。
一人心の中で愚痴りながら歩いていると、小さいながらも聞き慣れた声が聞こえてきた。
振り返ると、大好きな彼がいた。
「どうしたの?」
そう聞くと、彼は眩しい笑顔を向けて、
「一緒に学校行こ!」
と明るく言う。
雨なんて、気にしないと言わんばかりのその笑顔にときめく。
私は彼に恋をしているのだ。
雨の中2人で歩いていると、まるで世界に2人だけのようだ。
いつもこんなのなら雨の日も悪くないなと思うのに、、、。
楽しく歩いていると、彼の声色が変わったことに気づいた。
彼に向けていた顔を目の前に向けると、彼が好きなあの子がいた。
彼は、私といたことをなかったかのようにあの子のところへ走っていく。
「好き」
駆け出して行く、彼の背中に思わず言葉が紡がれる。
ただ、その言葉は雨音に包まれて、消えていった。
『美しい』
彼女はいつだって真っ直ぐで、信念をしっかりと持っている。
そんな彼女はとても美しく、いつだってキラキラ輝いていた。
そんな彼女に僕は恋をしている。
『どうしてこの世界は』
どうしてこの世界には感情と言うものがあるんだろう。
ほら今日も向こうから来る彼女に心がときめかされる。
彼女に会えて嬉しい。
彼女のことで一喜一憂する自分がどうしようもなく滑稽に見える。
でも、それでもこの感情は制御できない。
どうしてこの世界には感情と言うものがあるんだろう。
今日も、明日も明後日も、おそらく、この先ずっと彼女に対してのこの思いは続くのだろう。
『君と歩いた道』
はじめはただの幼馴染の関係だった。
毎日一緒に学校へ通い、そして一緒に帰ってくる。
いつしか少し大人になって、一緒に過ごすことも少なくなったね。
別の誰かと帰ることが増えた。
ちょっと寂しかった。
あぁ、僕は君と一緒にいたかったんだ。
君と歩いた道を、今は別の誰かと歩いていても、思い出すのは君のこと。
またいつか、一緒に同じ道を歩けたらいいな。
今日も一人想像して、別の誰かと歩いてる。
『夢見る少女のように』
あの子はいつもキラキラの笑顔を振りまいていた。
誰もが羨む可愛らしい笑顔。
あの子はいつも無邪気だった。
この世界の醜いものには気づかないほど。
あの子の世界は美しいものばかり。
この世の醜さは知らない。
いや、知らせてはいけないのだ。
夢見る少女のように幸せに暮らすあの子の世界を壊すことは、誰も許されない。
この世界の片隅で、あの子は今日も、夢見る少女のように生きている。