『雨音に包まれて』
今日も雨。
気持ちは憂鬱。ジメジメとした空に悪態をつく。
雨のせいで気分も落ち込む。
一人心の中で愚痴りながら歩いていると、小さいながらも聞き慣れた声が聞こえてきた。
振り返ると、大好きな彼がいた。
「どうしたの?」
そう聞くと、彼は眩しい笑顔を向けて、
「一緒に学校行こ!」
と明るく言う。
雨なんて、気にしないと言わんばかりのその笑顔にときめく。
私は彼に恋をしているのだ。
雨の中2人で歩いていると、まるで世界に2人だけのようだ。
いつもこんなのなら雨の日も悪くないなと思うのに、、、。
楽しく歩いていると、彼の声色が変わったことに気づいた。
彼に向けていた顔を目の前に向けると、彼が好きなあの子がいた。
彼は、私といたことをなかったかのようにあの子のところへ走っていく。
「好き」
駆け出して行く、彼の背中に思わず言葉が紡がれる。
ただ、その言葉は雨音に包まれて、消えていった。
6/11/2025, 12:28:18 PM