「俺…気付いたんだ、今更だけどな」
フッと笑って言う彼を私は冷めた目で見ていた。
本当に…今更なんなのよ。
──────「は?人生って所詮"金"だろ?」
「金さえあればチヤホヤされるんだ、色んな女達からな、それに金さえあれば誰からも信頼される」
金さえあれば、金さえあれば…それが貴方のいつもの口癖だったよね。
札束を手にいつも余裕そうな顔で言う彼に私は心底うんざりしていた。やめてほしかった。
私は…昔の彼が大好きだったの。
昔の彼は…優しくて、何に対しても真面目に取り組んでてそんなところがカッコよくて私から告白して成立したのだ。
でも、あの出来事で彼は変わってしまった。
「おい!宝くじ当たったぞ!!」
「……え?」
宝くじが当たった事により彼はお金が大量に無いと生きていけないような人になってしまった。
お金が沢山ある事によって得られる幸福を知ってしまったのだろう。
「……気づいたって、何に?」
「俺間違ってたよ…」
スッと私の頬に彼の手が添えられる。
相変わらず私は下を向いたまま。
「お金なんかより大事なのがあるって、気づいた…いや、気づかされたんだ」
「だから…なんなの?ハッキリ言ってくれない?」
私はそろそろ怒りが限界を超えそうだ。
「金なんかより…お前が大事なんだっt…!?」
バシン!
鈍い音が周りへ響いた。
その音は私が彼の頬を叩いた音だ。
「言わせてもらうけどね…今更遅いのよ!お金散々使ってから急に何?」
彼は放心状態でポカンと口を開きっぱなしだった。
「貴方はもう…昔私が好きだったあなたじゃない」
そして私は…彼に背を向け、真っ直ぐに歩き始めたのだった。
月夜
月は夜を包み込み、夜は月を包み込む
月と夜はお互いになくてはならない存在
夜があるからこそ月は輝いていられる
月があるからこそ夜という美しい景色が生まれる
私はそんな月と夜の関係が好きだ
絆
─────「私達の絆は世界で1番だね!」
そう言って笑いあった日を私は今でも覚えている。
幼い頃私は人と関わるのが苦手でずっと影に隠れているような子だった。
そんな私を、貴方は見つけて…スっと手をさり気なく差し伸べてくれたよね。
正直、物凄く嬉しかった。
あんなに優しくしてもらった事は今までに無かったから素直に喜んでその手を握り返した記憶がある。
あの手の温もりはきっとずっと忘れないだろう。
貴方の優しさは本物で決して私を裏切ったりはしなかった。ずっと隣にいてくれた。
私も貴方に心を許していた。
だが楽しい時間はすぐに過ぎ去る…桜が舞ったあの木の下で私たちは誓った。
「私達の絆は世界で1番だね!ねぇ…またここで会いましょう!!」って
だから毎年私は桜が咲く時期になるとそこへ通った。
でも貴方は来なかった。
何年通っても、貴方は姿さえ見せなかった。
「…何してんだろ、私」
もう諦め半分な気持ちでいた。
「あ!…いた!!」
懐かしい声がして…振り返れば、、、
「ぁ……っ、遅い!何年ここに通いつめたと思ってるの!!」
「ごめんね…色々あって…((ニコッ」
あの時と変わらない屈託のない笑顔で…貴方がやって来たのだった。
半分諦めてたけど…私は間違っていなかった。
私達の絆はやっぱり世界で1番だ!