「俺…気付いたんだ、今更だけどな」
フッと笑って言う彼を私は冷めた目で見ていた。
本当に…今更なんなのよ。
──────「は?人生って所詮"金"だろ?」
「金さえあればチヤホヤされるんだ、色んな女達からな、それに金さえあれば誰からも信頼される」
金さえあれば、金さえあれば…それが貴方のいつもの口癖だったよね。
札束を手にいつも余裕そうな顔で言う彼に私は心底うんざりしていた。やめてほしかった。
私は…昔の彼が大好きだったの。
昔の彼は…優しくて、何に対しても真面目に取り組んでてそんなところがカッコよくて私から告白して成立したのだ。
でも、あの出来事で彼は変わってしまった。
「おい!宝くじ当たったぞ!!」
「……え?」
宝くじが当たった事により彼はお金が大量に無いと生きていけないような人になってしまった。
お金が沢山ある事によって得られる幸福を知ってしまったのだろう。
「……気づいたって、何に?」
「俺間違ってたよ…」
スッと私の頬に彼の手が添えられる。
相変わらず私は下を向いたまま。
「お金なんかより大事なのがあるって、気づいた…いや、気づかされたんだ」
「だから…なんなの?ハッキリ言ってくれない?」
私はそろそろ怒りが限界を超えそうだ。
「金なんかより…お前が大事なんだっt…!?」
バシン!
鈍い音が周りへ響いた。
その音は私が彼の頬を叩いた音だ。
「言わせてもらうけどね…今更遅いのよ!お金散々使ってから急に何?」
彼は放心状態でポカンと口を開きっぱなしだった。
「貴方はもう…昔私が好きだったあなたじゃない」
そして私は…彼に背を向け、真っ直ぐに歩き始めたのだった。
3/8/2023, 1:25:13 PM