あの日彼が言った
月に願いをは間違えて言っただけなのだろうか。
星に願いをじゃなくて月に願いをと言ったのには
なにか意味があるのだろうか。
その言葉が
なんの意味をもって言ったのかを知ったのは
彼が亡くなったあとのことだった。
彼が亡くなった後僕は自分の価値を見いだせなくなった
月に願う
彼を生き返らせて
─────『月に願いを』
「あぁ,最悪だ。」
その声は
厚く重なる灰色の雲から
地面に向かって真っ直ぐに降り続ける雨の音に
かき消された。
降水確率70%にかけて
傘も持たずに家を出た自分を恨むべきか
降水確率70%と予報した天気予報士を恨むべきか
急いでコンビニに駆け込んで
これ以上濡れるのを阻止した。
店内をゆっくり一周する。
雨が止んでいれば良かったけれど
それでも雨は止んでいない。
なんの用も無いのに居続けるのは
良くない気がしてならない。
かと言って店内に入ったからには
何も買わずに店を出るなんて
なんだか気持ちが進まない。
コンビニにはビニール傘が売っているけれど
これだけのために700円を消費するのも
無駄なきがしてきて
降り止まない雨のように
よくまとまらない思考に
自分は面倒な人だと思った。
結局傘は買わないことにして
ガムを買った。
傘をさして早足で歩く人とは反対に
自分は傘をささずゆっくりと歩いていた。
人々はそんな自分をおかしい人のように
ジロジロ見てきたが
自分も同じ気持ちなので
理解はしていた。
傘をささないなら走って帰るのが一般的だ。
でも思ったんだ。
結局濡れてしまうなら
どれだけ濡れても同じではないか,と
後悔はしてない。
これは傘を持って家を出ていたら
こんなことにはなっていなかったのだから。
─────『降り止まない雨』
自分の存在意義について説いて
勝手に凹んで落ち込んで
バカみたいに、自分の肯定感が下がったあの頃の私へ
思い出して小さなミスで落ち込む私へ
自分を出せないくせに好きなものを共有したい私へ
勉強が嫌いでゲームが大好きな私へ
ゲームのキャラの言葉に心打たれて
自分の世界は自分が主人公だって、
バカみたいにわかりやすい、私へ
色んな映画やアニメを見て感情移入して
すぐ泣いちゃう私へ
あの頃の私へ
今も私はそんなに変わってない
だけどこの生活悪くないなって思ってるよ
どんだけ私がこの世界でちっぽけだって思っても
この生活景色は私しか感じられないんだから
未来の私へ
きっと未来の私もそんなに変わってないと思う
だから今ある時間を
精一杯楽しんで充実させていきたい
─────『あの頃の私へ』
逃れられない
あなたから
どれだけ逃げたって
逃げた先にあなたがいるの
怖くて怖くて
必死になって逃げるの
あなたの目が届かないように
どこで間違ってしまったの?
─────『逃れられない』
気軽にまた明日なんて言えてた頃が懐かしい
いつも話してた友達にも
お互いすぐに会えるような関係じゃなくなって
もう学生気分じゃ居られなくて
もっと学生時代を楽しめばよかった
なんて後悔もして
また明日なんて言えないから
じゃあまた今度
次はいつ会えるかな
─────『また明日』