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「あぁ,最悪だ。」

その声は

厚く重なる灰色の雲から

地面に向かって真っ直ぐに降り続ける雨の音に

かき消された。

降水確率70%にかけて

傘も持たずに家を出た自分を恨むべきか

降水確率70%と予報した天気予報士を恨むべきか

急いでコンビニに駆け込んで

これ以上濡れるのを阻止した。

店内をゆっくり一周する。

雨が止んでいれば良かったけれど

それでも雨は止んでいない。

なんの用も無いのに居続けるのは

良くない気がしてならない。

かと言って店内に入ったからには

何も買わずに店を出るなんて

なんだか気持ちが進まない。

コンビニにはビニール傘が売っているけれど

これだけのために700円を消費するのも

無駄なきがしてきて

降り止まない雨のように

よくまとまらない思考に

自分は面倒な人だと思った。

結局傘は買わないことにして

ガムを買った。

傘をさして早足で歩く人とは反対に

自分は傘をささずゆっくりと歩いていた。

人々はそんな自分をおかしい人のように

ジロジロ見てきたが

自分も同じ気持ちなので

理解はしていた。

傘をささないなら走って帰るのが一般的だ。

でも思ったんだ。

結局濡れてしまうなら

どれだけ濡れても同じではないか,と

後悔はしてない。

これは傘を持って家を出ていたら

こんなことにはなっていなかったのだから。





─────『降り止まない雨』

5/25/2024, 11:35:35 PM