「あいつといるとスリルを味わえる。」
「確か甲斐谷って奴だ。」
「普段は大人しいんだけどね。」
俺はスリルを感じたい。
刺激が欲しいんだ。
ある人に甲斐谷っていう人の居場所を聞いた。
その場所にいたのは
ヨレヨレの服を着た薄汚い人だった。
甲斐谷さんですか?
その言葉に「おう」としか返事をせずに
寝転がっていた。
弟子入りを申し込んだがいい返事は聞こえなかった。
だが追い出されもしなかったので
スリルを感じるまで俺と甲斐谷との共同生活が始まった
─────『スリル』
飛べない鳥が見つけたのは大樹
飛べない翼が使えるようになるまで
大樹で休むことにした。
その大樹はどんな嵐からでも
守ってくれているような気がして
飛べない鳥は安心して休むことが出来た。
今ある不安も全部
大樹が包んでくれているような気がして
使えない翼が飛べるようになるまで
きっと使えるようになっても
きっと鳥はそこから離れないだろう
─────『飛べない翼』
5時30分
少し明るくなり始めた景色が好き
お昼すぎ
太陽が真上に上がって影が下にあるのが好き
16時40分
日が落ち始めて空が赤くなるのが好き
日に当てられてススキが黄金に輝くのが好き
時間が出来たらゆっくりと見ていたいね
─────『ススキ』
夢で見たあのシーンがやけに鮮明に残ってる。
「俺たち別れよう」
その彼の声が脳裏に焼き付いていて
せっかくの付き合って1年記念日なのに
今日の目覚めが悪いなぁ
確か夢で居た場所は近くの公園
もみじが落ちていたから秋なんだと思う。
私彼と別れちゃうのかなぁ
こんなの夢なんだからなんて
嫌な思考を切り捨てられたら良かったのに
こんな夢早く忘れてしまいたい
─────『脳裏』
彼女は毎朝この道を走る。
時間を記録しながら。
陸上選手なんだろう。
汗を流しながら走るあの子を
いつだって心で応援してる。
私は毎朝この道を走る。
みんなの期待に応えないと
いつも彼らは「才能」という言葉で片付ける。
それが嫌だった。
こんなにも頑張っていたのに
これは意味の無いことだったのだろうか。
大会の選手に選抜された。
嬉しかったけど彼らは
「才能があるのっていいな」なんて言っていた。
嫌味とかじゃなく素直にそんな言葉を出すのが
ほんとに嫌だった。
とある大会があるらしい。
私はその大会に見に行った。
朝見かける彼女がいた。
いつもは掛けない声をかけた。
「いつも朝走ってるの見てます。いつも応援してます。」
彼女は少し目が潤んでいたが笑って
「あいりがとうございます!」と言っていた。
私もなんだか嬉しくなった。
大会の日声をかけてくれた人がいた。
毎朝走っているのを見ていたそうだった。
応援してるとも言ってくれた。
私の頑張りを
才能とまとめないでくれる人がいる事実にホッとした。
意味が無いことなんて無いかもしれない。
─────『意味が無いこと』