彼女は毎朝この道を走る。
時間を記録しながら。
陸上選手なんだろう。
汗を流しながら走るあの子を
いつだって心で応援してる。
私は毎朝この道を走る。
みんなの期待に応えないと
いつも彼らは「才能」という言葉で片付ける。
それが嫌だった。
こんなにも頑張っていたのに
これは意味の無いことだったのだろうか。
大会の選手に選抜された。
嬉しかったけど彼らは
「才能があるのっていいな」なんて言っていた。
嫌味とかじゃなく素直にそんな言葉を出すのが
ほんとに嫌だった。
とある大会があるらしい。
私はその大会に見に行った。
朝見かける彼女がいた。
いつもは掛けない声をかけた。
「いつも朝走ってるの見てます。いつも応援してます。」
彼女は少し目が潤んでいたが笑って
「あいりがとうございます!」と言っていた。
私もなんだか嬉しくなった。
大会の日声をかけてくれた人がいた。
毎朝走っているのを見ていたそうだった。
応援してるとも言ってくれた。
私の頑張りを
才能とまとめないでくれる人がいる事実にホッとした。
意味が無いことなんて無いかもしれない。
─────『意味が無いこと』
貴方のようになりたかった私
私のようになりたかった貴方
お互いがお互いを羨んだ私たち
いつもあなたに憧れてた。
貴方になりたいって。
あなたとわたし
ないものねだりしちゃうなんて
なんだか似ているね
─────『あなたとわたし』
「俺が死ぬ時は絶対晴れになってる」
会う度に彼はこの言葉を残す。
ここは雨の国
晴れなんてここでは伝説にしか聞いたことがない。
あれから月日が過ぎて
彼はおじいちゃんになっていた。
お見舞いに行くと彼は笑っていた。
「久しぶり」
弱々しく聞こえる声は最期が近ずいているのを
感じて彼の前で泣いた。
困ったように笑いながら彼は言う。
「俺が死ぬ時は絶対に晴れている」
「まだそんなこと言ってるの?」と
笑いあったあと数日後彼は息を引き取った。
天気は雨だった。
でも私には少し暖かい柔らかい雨に感じた。
─────『柔らかい雨』
あの日の君みたいに
僕もそれになってみたい。
あの時君が来た時の感情を
いつか誰かに分かって欲しい。
だって君は一筋の光だったから。
あの日あの瞬間だけは
僕だけの君だった。
いつか僕も誰かのための僕で居られたらいいな
─────『一筋の光』
いつもこの道を通るあのおじさん
その背中は哀愁をそそる
寂しそうな背中をしてる気がした。
いつもこの時間にスーパーの袋を持って
疲れきってる彼に
私ができること
吹奏楽での練習として
窓を開けて応援ソングをあなたのために
演奏すること
少しでも明るい気持ちになれるように
今日も私の弾く曲を聴いて
─────『哀愁をそそる』