「可愛くて羨ましい。」
「頭いいね。」
「センス良くていいなぁ。」
友達はこう言って私を褒めてくれる。
「そんなことないよ。」
「ありがとう。」
「そう言ってくれて嬉しい。」
私はこう言って返す。
私を可愛いって言ってくれてありがとう。
私を頭いいと思ってくれてありがとう。
私がセンスいいと思ってくれてありがとう。
でもごめんね。
友達の言う私は外見とか点数でしか
見られてないんだなって思ってしまうの。
それでも私を褒めてくれる友達がいて幸せだよ
ありがとう。
素直に受け取れなくてごめんね。
少しは自分で自分を愛さなきゃね。
─────『ありがとう、ごめんね』
放課後,教室の片隅に座っている彼を見た。
「かっこいい」
その言葉が口から出てしまうほど
彼が綺麗に見えた。
オレンジ色に染まる空
日が傾いて差し込む光が彼を輝かせていた。
彼は,本を読んでたり,勉強していたり,
腕を枕にして寝ていたり毎日色んなことをしている。
どんな事をしていても彼はかっこよくて
見るだけで幸せだった。
この気持ちを彼に伝えたくて
彼に告白した。
彼は告白にOKしてくれた。
彼は私が放課後見ていたことに気づいていたらしい。
恥ずかしくて何も言うことが出来なかったけど。
私たちの関係は今年で5年目
2人の気持ちは覚めることなく同棲することになった。
今でも彼は部屋の片隅で本を読む癖は変わらないみたい。
────『部屋の片隅で』
雨が降ったあとの水溜まり
私はその水たまりが好きだ。
なぜなら反射して普段見てる景色が
地面に映されて綺麗に見えるんだから。
人が水たまりに反射すると逆さまに映るでしょ。
それも好き。
普段見ることってないでしょ。
新鮮で好き。
雨が降ってる時も好き。
傘さすことってここぐらいしかいないでしょ。
傘の柄が水たまりに映って
道路に色付けるでしょ。
だから好き。
雨が好き
反射して綺麗に見えるんだもん。
逆さまの世界も新鮮でいいね。
─────『逆さま』
急に不安になったり寂しくなった時
私は落ち着かなくて眠れない。
そんな時必ずあなたは私を抱きしめてくれる。
さほど変わらない体格をしているはずなのに
なんだか彼の背中は大きく感じる。
一定のリズムで背中をトントンと
優しく叩く彼は私に安心感を与えてくれる。
そんな彼とこんな関係になれていることに
幸せを感じながら彼の隣で目を閉じた。
眠れないほど不安になったり,寂しくなった時
彼は私を支えてくれる。
「...いつ私は君を支えられるかなぁ」
電気を消して暗くなった部屋でつぶやく私。
「...いつも支えてもらってるよ。ありがとう。」
ワンテンポ遅れて返ってきた返事。
そろそろ眠くなってくる頃だろう。
彼の返事に
「こちらこそありがとう。
これからも支えあっていこうね。」
こう返して
彼のほうに寄って深い眠りに落ちた。
眠れないほど不安な夜ほど彼と一緒にいたいと思う。
─────『眠れないほど』
私は何度目か分からない同じ夢をみてる。
私何者かにおわれて
逃げて出すと背後から頭を固いモノで
殴られる夢をみてる。
それはとても現実にあるような夢。
妙にリアルで怖かった。
夢はいつも殴られて終わる。
起きた時,私の心臓はバクバクと激しい脈を打っていた。
最近は背後から声をかけられると
怖くて異常な反応をしてしまう。
友達は面白がって何回もやってくる。
いい気分になんかならないのに
引きっった笑顔を見せて私も笑う。
彼が綺麗なネックレスをくれた。
「付けてあげる」
彼はそう言って私の背後に回った。
彼がそんなことするはずがないのに
無意識に警戒してしまう。
「似合ってるよ」
そういう彼の声と同時に
私は
“殴られなくて良かった”
そういう思いが最初に出てきてしまう。
私は夢に狂わされていった。
「このネックレスかわいいね。ありがとう。」
そういった私の顔は上手く笑えていただろうか?
彼が家まで送ってくれるんだって。
最後まで一緒に居れるの嬉しいはずなのに...。
引きっった笑顔が悟られないように
薄暗い街灯が照らす道を2人で歩く。
「最近疲れてる?」
彼がこっちを見て言う。
「少し,最近変な夢を見てて」
私が言うと大丈夫?
なんて心配してくれてるけど
“くだらないことでよかった”
そう思われてるんだろう。
彼が思っていなくても
今の私にはそう思われているようにしか
聞こえないのかもしれない。
私はいつこの夢に終止符を打てる?
私の現実にまで夢を侵食してこないで。
─────『夢と現実』