時間よ止まれ
どれほど奇跡を願っただろう
どれほど都合の良い魔法を欲しただろう
護ると誓った君は
僕の手の届かない距離で
だけど視界にははっきりと捉えられる位置で
その儚い命を奪われようとしている
気付いた瞬間駆け出したけれど
とうてい間に合いそうにない
僕と君の間を呑気に歩く人々は
まだ異常に気付いていない
諦めたくない
諦めきれない
短い時間のはずなのに
果てしなく長い時間のように感じられて
刺客の手の動きがスローモーションに見える
走る自分も全然思うような速さが出せない
いっそこのまま時間よ止まれ
止まってくれ
そうすれば君は生き延びられるのに
夜景
高層ビルの窓から外を見下ろす
深夜にも関わらず街はきらめいていて
眠りにつきそうもない
綺麗な景色だが
同時に脆さも感じる
この明かりが消えてしまった時
人々は何を思い、何を感じるだろう
その時は、そう遠くなく訪れる
だから今はこの光景を目に焼き付ける
華やかな景色、華やかな人々
全てがきらめいているこの夜景を
花畑
君の庭に、ちょっとした畑が作れるとしたら
君は何を植えるかな?
ミニトマト、きゅうり、枝豆
一般家庭でも育てやすいっていうよね
何より食費の節約になる
僕は、花がいいかな
パンジー、チューリップ、薔薇
赤、白、黄色
一面のお花畑にして
君と一緒に綺麗だねって言いたいんだ
空が泣く
まるで僕の気持ちを代弁しているかのようだ
どんよりとした空からひと粒、ふた粒
それはあっという間に大降りになって
僕の全身を、周りの景色を濡らしていく
僕はあんまり感情が昂ぶるタイプじゃないから
こんな時にどうすればいいかわからなくて
泣こうにも涙が出てこなかった
だからこの天気は、ありがたかった
雨よ、どこまでも僕を濡らしておくれ
愚かな僕のために
僕のせいで悲しい思いをしたあの人のために
僕の代わりに、あの人の代わりに
その感情を全て僕にぶつけておくれ
君からのLINE
今何しているの?忙しい?
いや、元気にしているならそれでいいんだ
連投しても迷惑になるよね
だから今は待つだけにするね
君からのLINE、いつだって待ってる
毎日が楽しそうで忙しい君は
なかなか既読も付けてくれないけれど
遅くなっても必ず返してくれる
あんまり遅いと心配だけど
ちゃんと信用しているよ、本当だよ
なかなか会えなくて寂しいけれど
君も頑張っているし、僕も応援している
だから今日も
必要以上に気にしないふりしながら
ずっとスマホをいじっているんだ