月に願いを
紺色の空に浮かぶ白銀の球
眩しいほどに幻想的な光景に
こんな日は奇跡が起こるのではと
思わずにはいられなかった
陽の光を反射して差し込む白い光は
明るいけれど陰の光
日中とは正反対の眩しさに
心の落ち着きと共に背徳も感じていて
あぁ、こんな願いを持ってもいいのだろうか
胸によぎるのはある種の後ろめたさ
だけど願わずにはいられなくて
月に願いをかけて
そして堕ちていく……
降り止まない雨
外は土砂降りだった
君は寝台に横たわって
荒く、でも弱々しい呼吸を続けている
医者を呼びに行った方がいいのだろうか
時は深夜、雨は止まない
それでも……
立ち上がろうとして
何かに阻害されて、振り返る
僕の服の裾を掴む君
こんなに苦しそうなのに
行かないでと首を振る
夜が明ければ
せめて雨が上がれば
君の手を握り祈るけれど
雨は降り止みそうにない
あの頃の私へ
わがままで、すぐ調子に乗って、可愛くない
ズボラで、面倒くさがりで、だらしない
さみしがりで、自分のことが大嫌いな私へ
ちゃんと生きられるし、自分の居場所あるよ
愛されるし、自分のこと、愛してあげられるよ
まだまだ人生、これからだよ
幸せになんかなれないし、なる資格もない
そう思っていたけれど
今ちゃんと、幸せだよ!
逃れられない
狭く、殺風景な部屋に一人ぼっちだった
ここに連れてこられてから
どのくらいの月日が流れたのだろうか
最初の頃こそ
くり返し、くり返し脅されて
逃げ出そうなんてそぶりを見せただけで
痛い目にあってきた
今は別に拘束されている訳ではない
部屋に鍵さえもかけられていない
あいつも、しばらくはここにこない
逃げようと思えば逃げ出せるのかもしれない
目の前の扉を開けて外に出て
誰かに助けを求めればいいのかもしれない
だけど
ここから一歩も動けない
震えが止まらなくて立ち上がれない
私はもう見えない糸でがんじからめに
縛られているのだ
また明日
夕暮れの帰り道
長く伸びる影の上で
名残惜しそうに足踏みする君
二つの影は一つになって
ゆっくりとまた二つに戻る
名残惜しいのは僕だって同じ
だから今は別れの寂しさより
明日何をしようか考えよう
どこに行きたい?
何を食べたい?
どんな話をしようか?
ほらね
ワクワクしてきた
だから楽しい明日のために
今日はそれぞれゆっくり休もう
じゃあね
また明日!