雫
手の中に溢れて
煌めいて、零れ落ちていく
それは神々にとっては
些細なものなのかもしれない
けれど、人々にとっては
かけがえのない、生命の雫
零れ落ちていくものはもう
救えないのかもしれない
けれど
諦めきれず掬い上げようとする
たとえその行為が
更なる雫を零れ落とすことになろうとも
何もいらない
欲しいものは何でも用意する
そう言っても、少女は無言で首を横に振る
そして私は少女がそう反応することを知っていた
少女は絶望していた
もう笑うことも涙を流すことすらなく
何の欲望も、欲求も持たない
ただただ光を失った瞳で私を見つめている
彼女をそうさせてしまったのは私の責任だ
だから私も何も望まない
彼女が再び感情を、笑顔を取り戻す以外は
もしも未来を見れるなら
自分の未来を見たいだろうか
どのように生きて
誰と出会って
どう死ぬのか
知りたいだろうか
色々と想像して
静かに首を降る
知って何になるのか
知ってしまったら変えることなどできない
決められた未来を生きることに
意味などない
そんなことより
もっと近くの未来を見たい
そう、頼んでいた荷物がいつ届くのか
もう限界なんだ
トイレで長期戦に挑んでも大丈夫なのか
無色の世界
私の世界には色の概念がない
みんなと見えている世界が違う
そんなことに気付いた時は
ああそうなんだとすんなり受け入れた
強がってはいたけど孤独だった
私はいつだって色のない世界でひとり
みんなの言うことがわからないし
私の言うこともわかってもらえない
だけどあなたと出会って
私は孤独ではなくなった
相変わらず私の世界は無色だけど
あなたと一緒にいることで
確かに少しだけ色というものを感じられた
桜散る
ピンク色の花びらがひらひらと舞い落ちる
そのただ中に立ち尽くす君
まるでピンク色の雨を浴びるように
上を見上げて花びらが当たるに任せている
君はただ静かに泣いていた
散っていく桜と同じように
君の想いも散っていったのだろうか
今はただ悲しくて悲しくて苦しい
花は散って後には何も残らない
だけど一年経てばまた花開くよ
散ってしまった君の笑顔も
一年経てばまた満開になるよ