意味がないこと
ソファーにごろりと横になって
クッションをちまちまと弄びながら
だらだらと君のことを観察する
君は一時たりとも無駄にしたくないのか
ささっと本を開き
パソコンに向かって熱心に何かを打ち込んでいる
僕の視線に気付いたのか
「どうしたの?」
と顔を上げる
「なんでも」
と返す僕
「また意味がないことばかりして」
呆れたように笑う君
だけど
「たまには意味がないことをしてみてもいいわね」
そう言ってパソコンも本も閉じて
ソファーにもたれて僕のクッションを取り上げる
どうやら、集中しているように見えて
行き詰まっていたらしい
「散歩にでも出てみる?特に目的はないけど」
「いいわね。着替えてくる」
うきうきと自分の部屋に引っ込む君
意味がないこともたまには意味があるのかもしれない
あなたとわたし
背の高いあなたとちっちゃいわたし
寡黙で声が低いあなたと
おちつきがなくて高い声のわたし
大人なあなたと
いつまで経っても子供のわたし
あなたとわたしは
いつだって正反対
何をしたってかなわない
お肉が大好きなわたし
甘いものが大好きなあなた
お外で遊びたいわたしに
家でのんびりしたいあなた
あなたとわたしは
いつだって正反対
なのにあなたはいつも譲ってくれる
あなたが大好きなわたし
あなたはわたしのこと
どう思ってくれてるのかな
柔らかい雨
静かに、しかし確かに地面が濡れ始めていた
長い干ばつに見舞われた大地は
貪るように雨粒を吸収していく
いつの間にか衣服がしっとりとしていた
だけど、帰ろうという気は起きなかった
久しぶりの雨は柔らかく、心地よかったから
先程まで萎れていた畑も
みずみずしさを取り戻していて
それはとても美しい光景だった
恵みの雨は全てを優しく満たしていく
一筋の光
終わりだと思った
周囲は真っ暗で
身体は動かない
不思議と痛みはあまり感じず
頭は冷静だった
何かの予兆に気づいた時には
もう遅かった
何が何だかわからないままに
気が付いたらこうなっていたんだ
崩れたのは天井だけなのか
それとも建物自体崩れてしまったのか
この状況ではそれすらもわからない
今の自分には何もできない
待つことしか…
どのくらいこうしていただろうか
不意に差し込む一筋の光
声は出なかった
だから辛うじて動く左手で
精一杯地面を叩く
一筋の光はやがておおきな光となって
自分の終わりはまだ先の話となった
哀愁をそそる
夕暮れ時の公園
僕はひとりきり
木枯らしは冷たく
木々に残った僅かな葉を
はらはらと散らしていく
特に何かあった訳ではない
いつもの日常だ
だけど
こんな日には
たまらなく寂しい気持ちになる
どんなに普段仲間と騒いでいたって
毎日が充実したフリをしていたって
結局僕はひとり
何かあった時に
頼れる人なんていないんだ
寂しい気持ちを抱えたまま
僕はひとり
帰路を急ぐ