世界に一つだけ
元気にしていますか?
僕は今、色んな国を旅しています
毎日見るもの触れるもの新しくて
同じ景色は二つとないくらい
だけど、たくさんのものを見て
思うことがあるんだ
僕にとっての世界に一つだけは
君しかいないんだって
帰ってきたら真っ先に君に会いたい
世界に一つしかないお土産を見つけて
世界に一人しかいない君に会いに行くんだ
迎えに来てくれるかい?
君にとっても
僕が世界に一つだけの存在でありますように
胸の鼓動
身長差がある私と君
抱きしめられると
私は君の中にすっぽりと収まってしまう
君の顔は私には見えなくて
私の表情も君からは見えない
私は目を閉じて
ただ、君の胸の鼓動だけを感じていた
かなり早く感じるのは
気のせいじゃないよね
私の胸の鼓動を君も感じる?
ドキドキしてるよね
少し、恥ずかしいな
恥ずかしいから、
もう少しこのままでいさせてほしいな
踊るように
突風に、紙の束が舞い上がる
持ち主が慌てたように紙を回収しようとするが
風に舞う紙はするすると手からすり抜けていく
まるで踊っているみたいだ
微笑ましく見守っていると
一枚の紙がこちらに飛んでくる
あっ、拾って…いや、見ないでー!
悲鳴を上げながら持ち主が走ってくる
目の前で躓く
何とか拾い集めたらしい紙束が
再び盛大に宙に舞った
視界に入ったのは丁寧に描かれたスケッチ
なるほど
前へ進み出て、舞った紙を集める
共に踊るのも、悪くはない
時を告げる
静かに。ただ、その時を待っていた
疲れ切っているはずなのに
頭の中は妙にクリアで
不思議な感覚だった
まるで、時が止まっているようだった
早くその時が来て欲しい
永遠に来て欲しくない
相反する思いを抱えて、待っていた
どのくらいの時が過ぎたのか
静寂を破る鐘の音
どうやら、その時は来てしまったらしい
ずっと無表情だった男はわずかに顔をしかめ
宣告を受けに向かう…
貝殻
貝殻を耳に当てると海の音がする
誰がそんなことを言い出したのだろう
そんなことあるわけないじゃないか
都合のよい幻想だ
そんな風に思っていたから
たまたま目の前に現れた貝殻を手に取ったのは
何気なく耳に持っていったのは
本当にただの気まぐれだった
なのに
貝殻を耳に当てた瞬間景色が切り替わる
広がる深い青
磯の香り
寄せて返す波の音
同時に
どうしようもなく悲しい感覚に襲われる
苦しく、切ない
どのくらいそうしていたのか
ふと、何かに呼ばれた気がして
何も疑問を感じることもなく
海の中へと消えていった
それは呪いの貝殻
その世界に引き込まれてはいけない