1年前
こんな未来が描けていただろうか。
あの頃の僕には、何もなかった。
知識、力、お金。夢や希望。
生きる気力さえも。
今の僕には、帰る場所がある。
少しは知識や力をつけられたし、
何より、守りたいものがある。
何もなかった僕に、全てを与えてくれた。
君に会えて、よかった。
好きな本
マットな質感に、箔押しされた文字。
触れるだけで幸せな気持ちになれる。
扉を開くと、広がる世界。
知らない国。知らない人。
知らない物語。
知らなかった感情が溢れる。
何度見てもそれは、新しい気持ちをくれる。
あいまいな空
見上げた空は、何色だろうか?
時には青く、時には緋色。
白、黒、灰色。
様々に色を変える空。
その境界はどこだろう?
雨と晴れ。
夜と朝。
その境界があいまいなように。
僕と君との関係もあいまいだ。
あじさい
帰路を急いでいた。
空は薄暗く、視界は霞んでいる。
傘こそ差しているが、
足元はすでにべちゃべちゃだ。
普段は気にならないのに、
こういう日は駅から遠い自分の家が憎らしい。
視界の隅に何かを捉えて、思わず足を止めた。
濡れるのも構わず手を伸ばす。
こんなところでも咲くんだ。
田舎にはたくさん咲いていた。
ただ、田舎に比べて少し赤みが強い。
土地の質で花の色が変わるんだっけ。
こんなところで、土地の違いを感じるなんて。
行き交う人の数、建っているビル群。
違いなんて、いくらでもあるのに。
ふと、手元に光が刺す。
いつの間にか、雨が止んでいた。
花びらに溜まった水滴が光を反射し、
あじさいの花がキラキラときらめいている。
一度しゃがんで花びらをなでてから立ち上がる。
この街での暮らしは始まったばかり。
未来はきっと、希望に満ちている。
好き嫌い
あれも嫌い。これも嫌い。
いつだって君は好き嫌いが激しい。
正直、困ることも多い。
君と一緒に出かけられる場所は限られるし、
嫌いなものが出てきたら必死になだめたり、
僕が代わりに食べたりしたいといけない。
君の好きなものを探すのは大変だ。
だけど、一つだけ知っている。
君は僕のことが好きだって。