野菜大魔王

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1/22/2024, 4:20:17 PM

タイトル【タイムマシーン】
文字数 1690文字くらい


 どういう縁だったか忘れたが、私には科学者の知り合いがいる。性別は男で、歳は慥か80を越えていたと思う。傴僂のように背が曲がっており、梅干しとブルドッグを足したみたいな顔が特徴的な爺さんで、その人物を、私は博士と呼んでいる。
 その博士からタイムマシーンを発明したという旨の報せを受けたので、見に行くことにした。博士の家は私の家から直線距離で約4㎞、南に下ったところにある。自転車を走らせれば10分とて掛からない距離だ。
 自転車を漕ぐと、やはり10分で彼の家に着いた。邪魔にならないように建物の横に自転車を停めた。
 異人館にも似た瀟洒な館は、意外にもボロボロだ。ドアは付け直したのか、比較的新しい。そのドアにつけられたノッカーを敲いてみるが、返事はなく、返ってくるのは鼓膜を震わす耳鳴りだけである。
 研究所の方に居るのかと考え直した私は、研究所──ガレージを改造したもの──へ向かった。
 中に入ると案の定博士がおり、やっと来たか、と胴間声を上げた。
「そのヘンテコなものが、件の発明品ですか?」
 博士の側にある、高さ3m前後の、何とも形容し難い機械を指差して質す。
「うむ、これがそうだ。科学に造詣のないお前さんに仕組みを説いても無駄だろうから、実際に使って見せよう」
 そう言って、博士は機械に乗り込んだ。
「このタイムマシーンはな、自身が存在する時代にしか行けん。自身が死亡した後の時代や、自身が生まれる以前の時代には行けないし、更に言うと、日付単位までしか細かく設定出来ない。つまり、今から1分後とか、1時間後の未来には行けず、一番近い未来だと翌日、過去ならば昨日になるということだ」
「随分と不便なんですね」
「だからこれから未来に行く。未来の儂なら、その欠点も克服しているだろうからな。取り敢えず、100歳の儂に会いに2044年に設定して──」
 何やらガチャガチャと操作してから、では行ってくる、と言い、博士は仰々しくボタンを押した。
 ──しかし悲しいかな、何も起きない。
「20年後、博士は死んでるんですね」
「うむ、では2043年はどうだ?」
 またガチャガチャと操作してからボタンを押すが、何も起きない。
「99歳になる前に死んでるんですね、博士」
「むむむ、ならば2042年だ!」
 ──また何も起きない。
 そうして、1年ずつ調整するも変化はなく、19回目の応酬が繰り返された。
「博士、来年には死んでるんですね。これじゃあ、タイムマシーンの改善は無理なんじゃないですか?」
「むう、天才の儂なら1年でどうにかするだろう」
 博士はどこか苛立った声で返事をする。
「2025年! どうだ‼︎」
 やはり変化はない。次は今年の日付で調整を始めるが、何も起きず、日付が現代に近づくにつれて、顔を赤くし、額に血管が浮かび上がっていく。
「明日ァ!」
 ──変化はない。沈黙が垂れ込むと同時に、博士の顔は邏卒の如く歪み、憤慨した。
「何でだ! 儂の理論に間違いはない筈だ!」
「そうは問屋が卸さないと言うじゃないですか。タイムマシーンなんて、やはり夢物語だったんですよ」
「どうしてだ! うぬおおおおおっ」
 耳を劈く怒号。だが次の瞬間、それは、うぬんっ、という何とも間抜けで、頓狂な声に変わった。どうかしたのだろうかと思っていると、博士はバランスを崩し、タイムマシーンという名の巨大な鉄屑から滑り落ちた。
「どうかしました、博士⁉︎」
 慌てて駆け寄り彼の身体に触れる。
 何か違和感があった。
 ──もしや。
 鼻腔に人差し指を近づけた。
 ──やはりか………
 博士は呼吸をしていなかった。頸に触れ、脈を確かめるも、どうやら止まっているようで、瞳孔も完全に開いていた。
 怒りが度を超え、頭に血が上りすぎたのか、博士はたった今、私の目の前で死亡したのだ。
「そういうことか………」
 タイムマシーンは多分成功していたのだろう。

『自分が存在する時代にしか行けない』

 博士は“今日”死んだために、明日(未来)には存在しなかった。だからタイムマシーンは起動しなかったのだ──

1/21/2024, 1:55:14 PM

特別だって気付くのは、いつだってその少し後。

ずっと続けば、なんてのは間違い。

限りがあるから特別なんだ。

1/20/2024, 7:04:39 PM

小さな村に四兄弟がいた。
ある日彼らの前に、村で一番美しい女が来てこう言った。

「今から一週間後、この中の誰かがあの太陽を私にくれたなら、私はその者と結婚しましょう」

その言葉を聞いた男たちは太陽を手にするべく、それぞれ行動を取った。


長男は「太陽は海に沈むのだから、海中を探せばいい」と言って、船に乗って海原へと旅立った。

次男は「地平線の彼方に太陽が落ちるのを見た。ならば、地平線の向こうへ追いかければいい」と言って、徒で大陸を渡る旅に出た。

三男は「太陽は東から昇り、西に沈むと教わった。その周回軌道上に網張れば、漁をするように捕まるのではなかろうか」と言って、巨大な網を担いで高い場所を目指し、村を出た。

四男は「あげるなら、とびっきり美しいものを」と言って、幾つかの道具を持って丘に出かけた。


それから一週間後、四兄弟それぞれ何かを手に、村へ帰って来た。


長男は言う。
「これはマンボウといって、海の太陽魚と呼ばれる魚にございます」

次男は言う。
「これはヒマワリといって、見た目の通り太陽にそっくりな花にございます」

三男は言う。
「これはタイヨウチョウ科の鳥で、名前に太陽とあるのだから、きっと太陽の鳥にございます」

四男は言う。
「これはあなたのために描いた、世界でたった一つの絵であり、たった一つの太陽にございます」


四つの品を見てから、女は「あなたが一番素敵ね」と言って、四男を選んだ。

1/19/2024, 11:48:04 AM

もう会えないと解ったら あなたに会いたくなって
瞼の向こう側に探しにいくよ

恥ずかしくて言えなかった 今は沢山言いたい事
大事だった事失くして知るよ

あなたが居た事 あなたと居た事
過ぎていく時間 時々忘れるけど

他人事にはしないよ 何度でも思い出すよ


いつか会えなくなるから 出来るだけ側に居るよ

独り言にはしないよ 沢山話をしようよ

1/18/2024, 1:20:45 PM

自動録画 頭ン中
お揃いの記憶は多い方が良い

なのに思い出すのは
割とどうでもいい事ばかり

それも こっそり奪われていく

ハロー バイバイ 繰り返して
そうやって来たんだ ここまで
約束なんて 要らないでしょう
思い出せたら また会えるから

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