冷たさを増して、風に色が着く
人の世に似ている気がする
あれこれ綺麗なモン詰め込んで
出来上がったのはとても醜いもの
言葉に直して丁寧に並べた本音
無駄なくらい丈夫に造られた盾と剣
話し合ったり 鏡を見たり
そのどちらも殺し合う事なのかも
疑った優しさ 悪魔か天使か
取捨選択 間違えたらすぐに迷子
逃げようとして後退り その内ぐるりと周り
辿り着いたのは同じ場所
ただいま、どうやら戻って来たみたい
たまにちょっと乱れて 気が付いたら元通り
命の音色 重ねて繋がった世界
幾つか失くなったとしても星は廻る
それが普通で とても当たり前の事
暗くて良かった だって 気付けたから
普段は使わない 「ありがとう」
少しだけ素直になれた気がするよ
彼はいつも眉を顰めている。
ちょっと怖い。けど、何だか少し大人っぽい。
どうして睨むの、と訊いたことがある。
すると彼はこう答えた。
「目が悪いから」
眼鏡を掛けたら、と私が言うと
「眼鏡は見え過ぎるから嫌い」と言う。
「じゃあコンタクトは?」
「付けるのが怖い」
面倒なヒト、と思ったと同時に、
意外とかわいいトコあるな、と思った。
朔の夜に咲く花、鯨飲馬食の態でどんちゃん騒ぎ、あちこちで踊る人に唄う人で、街は騒がしい。飲食店で私が食事をしていると、近くのテーブルから侃侃諤諤と話す聲がした。何を話しているのだろう、そう思って調律師の如く耳を澄ましてみる。
「夢ってのは子供の戯言だ。大人になると現実を知って、出来ることと出来ないことが分かる。そうすると大言壮語も憚られる」
「それは君、そもそもが間違っているよ。夢は飽くまで見るものであって、叶えるものなんかじゃない。手に入らないから語るんだ。大人になったって、手に入らないものは沢山あるだろう。出来ないからって、嘯くことすら遠慮する理由がどこにある」
「夢は醒める。叶えようとする情熱も、不可能だと知ったら冷めてしまうじゃないか」
「二度寝すれば、続きとはいかないものの、夢はまた見れる。醒めたなら、もう一度夢を見ればいい。熱も冷めたなら、温め直せばいい」
「綺麗事だなア」
「人はね、馬鹿にしていた綺麗事にこっそり救われているものなんだよ」
食事も忘れてスッカリ聴き入ってしまった。お陰で夕餉は死んだかのように冷たい。言葉を反芻する。
『醒めたなら、もう一度夢を見ればいい。熱も冷めたなら、温め直せばいい』
なるほど、慥かに温め直せばいいな。しかし飲食店だとそうもいくまい。外食したことを少しだけ後悔した。