はーい! こちら魔王城前でーす。
さあ、今年もやってまいりました、絶望フェス! 今回はどんな絶望が味わえるんでしょうかー?
普段は魔物の豊かな底無しの湖に囲まれている魔王城。
年末のこの時期に限って、湖がすっかり凍ってしまうのですがー。
その凍った湖の上に、大小の氷壁がせり上がってこのように、天然の巨大迷路を作り上げているんですね〜。
通称『凍てつく鏡』と呼ばれるこの迷路、ここを抜けないと魔王城にたどり着けない、というわけなんですが……ご覧いただけますでしょうか。
今年も、人間族の勇者さんたちが、続々と集まってます!
今年こそは魔王様を倒さん! と、集結した勇者さんたち。もはや年末の風物詩ともいえる光景ですね〜。
魔王様に相対するには、まず、この『凍てつく鏡』を突破しないといけません、が……さてさて。
魔王城の門前を任されちゃってます我々、夢魔一族のトラップを抜けることが出来る勇者さんが、今年こそは現れるのか、どうか……。
あっ、さっそく『凍てつく鏡』のトラップ、その名も悪夢回廊にー、まんまと囚われちゃった勇者さんがいますよ〜!
『凍てつく鏡』──ピッカピカに磨かれた鏡のような氷壁に映し出されるのは、自らの醜い真の姿や犯してきた過去の過ちなどなど、思わず迷わず絶望したくなっちゃうコンテンツが盛りだくさん! ですからねっ!
それでですね、ウフフッ。ワタクシ、レポーター特権で、出来たてホヤホヤの絶望を味見しちゃうんですが……それでは、いただきま〜す!
……んっ、むむ、ふぅん……ゴクリ、はい。
えー、とーーっても濃厚で、えっと、もうひと口……うん、やっぱり勇者さん由来の絶望は、ひと味違いますね〜、後味も深くて……美味しいですっ!
さあ、この絶望フェス、『凍てつく鏡』にチャレンジする勇者さんがいなくなるまで、絶賛開催中です!
最上級の絶望をお得に、お手軽に味わいたい夢魔のみなさーん!
ぜひ一度、足をお運びになってみてはいかがでしょーかー?
『雪明かりの夜』
寒月の光が踊る
雪明かりの夜に
雪上を一匹で
疾駆するのは
雪色のウサギ
明るい夜だ
明るい夜だ
誰もいない雪原を
飛ぶように渡って
付けた足跡になど
かまわず一目散に
行く手を阻まれず
何者にも追われず
一面の白の中に在る
真っ白なただ一匹は
幸福だとか
不幸だとか
そういう思い煩いから
遥か遠くへ駆けるのだ
じゃあ言われた通り
『祈りを捧げて』みようか
けれど
方法を知らない
祈るのと願うのは
どう違うの?
利他を偽善だと訝るお前には
永遠にわからない
祈りとは
ただ thank you って
口にするだけ
それだけなんだってことを
たぶんきっと
信じてはもらえないから
際限なく『降り積もる想い』と溢れる愛おしさ、これらはセットになっていて、その愛おしさを想いを持つ同士、お互いに与え合うことが、この感情の着地点。
なら、そういう"降り積もって溢れさせる"という流れを作れない、相手に受け取ってもらえない場合は──でも、溢れさせることの出来ない想いを必死に堰き止め、積もるものも掻いては脇へ捨て溶かそうとしたって無理で、そうこうしているうちに私は、降り積もるものは根雪へ、それでも溢れ出るものは、誰の目にも留まることのない気体へと変える術を身につけた。
私はこの片思いをこうして、熟練の技とも言える技術でもって長年続けてきたわけで、だから──。
「じゃあ。根雪から溶かせばいいってことで、なら、」
「やっ、だめ、お願いだから、ゆっくり……じゃないと決壊しちゃう、なんかおかしくなっちゃうから、」
「だーいじょうぶ。むしろ、しっかり決壊してもらわないと、こっちで受け取れないだろが」
あーあ。『♪雪がとけて川となって、山をくだり〜谷を走るぅ』なんてBGMを空耳するくらいには私、おかしくなってる……。
っていうか、なんで根雪のことなんかペラペラ話しちゃってるの? ちょこっとアルコール入れたからって、私チョロ過ぎだし、あーもう、すでにいろいろと、ドロッドロに溶けまくってて……。
「うう……両思い、コワイ……」
「え? それ、饅頭コワイってヤツ? ふーん、それならこうして、」
「ちょ……っ、待って待って、待ってー!」
それから僕は今日のお題『時を結ぶリボン』のことばかりを考えて過ごした。
ってかさー……こんなん、もはやトンチだろ? なにも思い浮かばねぇ、あーもう次のお題に切り替わるまで時間がない、時間よ止まれー、なーんて……あれ?
"時を結ぶ"は──そこに、その時点に結び目を作って、固定すること?
それってもしかして、"時間を止める"ことを意味するんじゃない?
『時を結ぶリボン』とは。
時間を止める力を持つリボンのこと、だったり?
……ってとこまで、スマホでポチポチと入力を終え、OKをポチると。
突然、「パパパパーン」という効果音が、耳に飛び込んできた。
「正解! おめでとうございます〜! 正解した方には現物を差し上げま〜す!」
どこからか聞こえてくる声にキョロキョロしていると、なんの前触れもなくハラリ、と赤いリボンが落ちてきて、僕はそれをキャッチする。
「え……ええっ?! これってそーゆーシステムだったの?」
「実はそうだったんですね〜、まー現物を差し上げられるだけのピッタリした正解は、なかなか出ないんですけどね〜。前回は『秘密の標本』のときでしたかね〜」
「マジか……」
頭が追いつかない。
てか、コイツ……この声、誰?
「じゃ、この辺で失礼します〜。この度はおめでとうございました〜」
「えっ、ちょっと?」
……と、そんなわけで。
いま、僕の手元には『時を結ぶリボン』が一本、あるのだが。
この後、これの実際の効果について記したいところであるのだが……とりあえずやってみた固結びでは効果がなかったので、どうやら蝶結びが発動条件のよう。
がしかし、僕は靴紐すら結べない──なんなら靴は全部スリップオンだし──ので、目下のところ、蝶結びを練習中。
この続報は……あー手がつりそう、もう少し時間がかかりそうです、あんまり期待しないでお待ちください!