komaikaya

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12/9/2025, 8:50:20 AM

 気がつくとそこは雪原のど真ん中で、あたり一面の白。ボクはダウンジャケットの背中に身を預けていて、ダウンジャケットの彼はボクを背負っていても、『雪原の先へ』先へと、軽やかに進んでゆく。彼の足元に目を落とすと、わらじにカンジキを付けていて、ああなるほど、ってボクは思ったんだ。

 是非とも冬将軍様にお目通りを、って彼──冬足軽がね、ダウンジャケットのお礼にって、そりゃもう、うれしそうに言うんだ。ボクを背負ってる彼だけじゃない、ほかの冬足軽たちも、ダウンジャケットをすごく喜んでくれて──。

「あー……あれから本当に、冬足軽にダウンジャケット着せてやったのか。ほかの冬足軽たち、てことは人数増えてて、そっちにもダウン着せてやって……夢とはいえ、オマエって律儀なヤツだな」

 一面の雪なのにぜんぜん寒くないのはたぶん、ダウンを着込んだ冬足軽たちに取り囲まれてるせいなんだろう。お揃いのダウンジャケットを着た彼らは、楽しそうに歌なんか歌っていて、もうすぐ着くから、ってボクを励ましてくれて。雪原を抜けると川があって、その川を渡れば、冬将軍の陣が……。

「んん? 川を渡るってのは、なんか……あ、体温計鳴った……は? 熱、ぜんぜん下がってねぇじゃねえか! ちょ、ストーップ、冬足軽どもに全隊止まれ、って号令! じゃない、解熱剤……ってこれ、昨日の夜の分だろ?! ちゃんと飲め、こんのクソバカヤロウが!」

12/8/2025, 9:46:49 AM

『白い吐息』

それは
つまり

こんなわたしにも
体温があり
血が通っているのだ
ということ

12/7/2025, 8:20:25 AM

『消えない灯り』

いつかあなたが
こぼしたことば
とるにたらない
そのひとことが
いくとしつきも
こころにあって

ことばはまるで
きえないあかり

こごえるよるを
あたためるねつ
まようこぶねを
みちびくひかり

こんなちいさな
ともしびなのに

ただそれだけで
ほどけるわたし

12/6/2025, 9:23:55 AM

 クリスマスのイルミネーションに『きらめく街並み』を、私は涙を滲ませながら友野くんに手を引かれ、足早に通り過ぎる。人混みの中、せっかくいい場所までたどり着けたのに、私のコンタクトレンズがズレてしまったせいで──。

「……ごめんなさい」

 近くの商業施設内のベンチで。私はやっとズレたコンタクトレンズを直すことが出来て、でも。

「もう痛くない?」
「うん」
「空気が乾いてるし……さっきの風、細かいチリが混じってたから、コンタクトレンズには厳しいよな」

 まさに、その風でヤラれた。

「うん。でも……プロジェクションマッピングの時間、過ぎちゃった。私のせいで、」
「気にしてんの? や、コンタクトのズレは急務でしょ。あれ、死ぬほど痛いし」
「え? 友野くんメガネなのに、コンタクトレンズ付けたことあるの?」

 そう私が訊くと、友野くんが照れくさそうに言った。

「あー……うん。大学デビューしてやる、って付けてみたけど、一ヶ月で断念した」
「……私も、私もおんなじ! でも、もう半年以上経つのに、慣れなくて。……けど、」

 言いかけておいて、続きを言うのをためらったのだけど。友野くんのメガネ越しの視線がそれを許さず、私は続けた。

「メガネだと、ね。嫌われたりなんか、しないかなぁ、って」
「ええ? 自分がメガネなのにそれって、意味不明過ぎだと思うけど?」
「地味メガネ、って呼ばれてた女子としては、その、カレシにそんなこと思われたら、さ?」
「地味メガネ。俺も言われてた……」
「友野くん、も?」

 二人して顔を見合わせて、そして──どちらからともなく、吹き出してしまった。

「なんだよなーあれ、メガネかけてるだけでメガネ呼ばわりなの。当時はしょうがねえって思ってたけど、よく考えたら失礼だよなー?」
「だよねえ。地味、って、ただ大人しくしてただけなのにねー」
「……ねぇ。メガネ、持って来てる?」

 言われて、私はコンタクトレンズを外し、メガネを掛けてみせ。すると友野くんが私に真っ直ぐに向き直って「地味メガネなんかじゃない。ちゃんと……可愛いから、安心して?」と、やっぱり照れくさそうに言ってくれた。

「俺の視力、相当だぞ?」
「えー? 私だって、視力の悪さで負けたことないよ?」

 メガネっ子特有の謎のマウントを取り合いながら、イベントの終わってしまったイルミネーションの下を、手を繋いで歩く。

「俺らってー、裸眼になれば、毎日がイルミネーションだもんなー」
「フフッ。ただの信号なのに、光がフワッと大きくなったりしてね」

 うん。世界って、思ってたよりもキレイなんだ。
 こうやって……友野くんと、一緒なら。

12/5/2025, 8:44:38 AM

『秘密の手紙』の情景3篇

その1:

「先月3日のお題は『秘密の標本』だった」
「そうでしたね」
「先々月25日は『秘密の箱』、そして今月は、」
「『秘密の手紙』! 秘密シリーズ、今月もやっぱり来ましたね!」
「我々が予想していたお題ではなかったがな」
「ですねー」
「しかし、箱、標本、手紙。これらが暗示するもの、とは……」
「……ハッ、まさか?」
「……まるでわからんな」
「わかんないんだー」
「が、おそらく来月は『秘密のマント』」
「ええ? なぜ?」
「なんとなく、だ」
「なんとなく、なんだー」


その2:

「あら? この手紙の宛名……タケルくんが書いたの?」
「そう。『秘密の手紙』だから、ママは絶対見ちゃダメ、ですって」
「あら、フフフッ。でも、誰宛てなのかなー? かなりアーティスティックなひらがなだから」
「フフッ。じゃあヒント、12月といえば?」
「……あっ。これが『さ』で『ん』で、」
「正解。つまり、サンタさん宛ての秘密の手紙」
「フフフッ。でも、見ちゃうんでしょ?」
「ちょっと……迷ってる」
「……?」
「ご要望にお応えできないような、予算オーバーなモノが書かれていた場合……」
「あー……ウチも、どうしようかしらー?」


その3:

「わーい、クリスマスに先輩のウチに呼んでもらえるなんて、うれしいです! それに今日は、付き合って2ヶ月記念日ですねっ」
「あの10月25日から、もう2ヶ月か……」
「あっ! 私の『秘密の箱』、飾ってくれてる!」
「ああ。……これ以外はべつに普通だし、カワイイんだけどなー……」
「え? 先輩、なんて?」
「……いや? じゃその辺適当に座ってて。飲み物を、」
「あのっ! 先にプレゼント、お渡ししてもいいですか?」
「初っ端から? ……って、なに、コレ?」
「お手紙です! 私の『秘密の手紙』!」
「秘密。ってことは、」
「ぜーったいに、開けちゃダメ、ですよ?」
「やっぱりかー」
「あの箱の中のとは、違う秘密です!」
「あーうん。おっけー、大事に保管しとく……」
「これは! 肌身離さず、持っててください!」
「……えーと?」
「ちゃんと、ストラップ付き防水カバーもご用意しました! 水濡れ厳禁ですからね!」
「あーはい。うん、手紙だもんね?」
「これでいつでも私の秘密が気になって、手紙を開けちゃおっかな、って悶々と葛藤出来ますね!」
「ほんっと、なにを試されてるんだろーなー、俺……」


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