「この道の先に何があると思う?」
そう、帰り道に幼馴染は森の奥に指を差しながらそう言った。
何処か不気味ささえ感じてしまう幼馴染の笑顔に俺は答えを考えた。
「特に何も無いんじゃないか?」
「ふふっ笑…へ〜…、何でそう思うの?」
俺の答えに対して、幼馴染の好奇心が湧いてくる。
「人がいる気配が無い気がするんだ。人が住んでるっていう。だから特に何も無い気がするんだ。」
俺がそう答えると、幼馴染は一瞬目を丸くしたように見えたが、次の瞬間には口角が上がっていた。
幼馴染は目を細め、口角をニヤリとあげ、俺にこう"答え"を言った。
「私ね、この質問、親にも言ったことがあるの。そしたら親は何故か"私が人には見えない何かが見える子"って思い始めたんだ。」
夕日に照らされながらそう、淡々とした口調で話を続ける幼馴染。
「人ってさ、必ず第一印象でその人はこうって決めてしまうと思うの。だから親は、私がそう言った時にそう感じてしまったんじゃないかな。」
最後に幼馴染は、風に髪の毛を靡かせて、俺の目を見つめながらこう言った。
「強く生きてね。世の中には第一印象だけに囚われる人が沢山居るから。」
#2 特に無かった。
「何で私と付き合ったの?」
んー、性格かな。
優しいし。
「優しい人だったら他に沢山居るよ?」
確かに。
あー、でも普通に可愛いし。
「私より美人な人は沢山居るよ?」
確かに。
「じゃあ何で私と付き合ったの?」
「特に無かった」
#1 愛したかったから。
「愛してる。」
そう、俺の目の前で言ったのは愛おしい彼女。
『じゃあ、相手が浮気をし、貴方のことを裏切ったのにも関わらず、何故貴方は許したんですか?』
「愛しているからです。」
きっとあの子は考えを直して、戻ってきてくれると信じていました。
『相手が貴方のことを元々好きでは無かったのに、何故貴方は付き合い続けていたんですか?』
「愛していたからです。」
どんな状態でも、きっとあの子は自分のことが好きだと思っていました。
『じゃあ何故、貴方は彼女を殺したんですか?』
「"愛したかったからです"。」
笑っていれば明日を生きていけると思った。
「お前はなぁ……何でそうなんだろうなぁ……。」
へへっ…。
「笑ってる場合じゃ無いんだぞ?」
わはっ……。
「お前みたいにヘラヘラしてる奴は自分が今、転けてる事すら気づかずに笑われてんだよ!!!」
………。
ミスに対して、浮かない顔をするより、
どんな事があっても笑っていれば、
また明日を生きていけると思ったんだ。
これから問題を出します。
自由にお答えください。
貴方は突如不幸な事故で命を落としてしまう。
しかし、
幸運な事に脳だけは原型をとどめることが出来た。
とある研究者が貴方の脳を電極とコンピューターに繋いだ。
その甲斐あって、貴方は意識を取り戻すことが出来た。
意識を取り戻した貴方は、事故の記憶が無い状態で、生前と変わらぬ日常を過ごした。
美味しいものを食べ、喜びを感じ、風を感じた。
しかし、
それはコンピューターが見せている仮想の世界だった。
貴方は脳が電極とコンピューターに繋がれる前に
死んでいるのだ。
身体は無い、感覚があっても、それはコンピューターが作っている感覚なのだ。
とはいえ、
貴方はその世界がコンピューターで作られた世界という事実を知ることは無い。
疑うこともない。
ここで質問です。
この話を前提に貴方は、
今生きている世界が本当に実在していると言い切れますか?