雪
私はお婆ちゃんの家の雰囲気が大好き。
人生で初めて行ったときに、何だか懐かしい雰囲気を感じたからだ。
何処かで見たことがあるような、でも来たことが無いような、何回も来たくなる。
「あいちゃん、今日も来てくれたんだねえ〜、ありがとう。」
お婆ちゃんに対しては何にも感じないけど、ここの家に覚えがある。
たまに、夢にも出てくるんだ。
「何だか来たことがある場所…、でも、それ以上の記憶が無いし…、」
夢に出てくる場所は、お婆ちゃんの家と、チラチラと雪が降っている場所。
本当にうろ覚え。
「お婆ちゃん。私ね、何かここに来たことがある気がするの。雪がチラチラ降っていて、お婆ちゃんの家の雰囲気が何だか懐かしいの。」
お母さんに、私が物心付く前に来たのかも聞いてみたけど、お母さんは来てないって言ってた。
「本当かい…?もしかしたら、前世の記憶なのかもしれないね。私にも子供が居ったから。」
あの子にはなれない。
皆に優しくて、可愛くて、頭の良いあの子にはなれないんだ。
同じ年に生まれたって、同じ性別だからって、あの子のようになれる日は来ないんだ。
最初からこれは決まっていたんだと思う。
生まれた時期が悪くて、生まれた環境も悪かったんだもの。
「俺さ、あの子が好きなんだよね!」
私がずっと片思いをしていた男の子まで、あの子に惚れてる。
だけど、性格の悪い私はあの子がどんな性格かを一言で表すことが出来る。
「ただの八方美人」
私は毎回あの子にそう思ってしまう。
皆に良い顔をしているから、誰かが悪口を言っていると止めるけど、女子達がそう言っていたら、あの子は合わせてそう言う。
そして1人では何も出来ない。
「出来損ない」
皆の意見にも合わせるから、自分の意見をあまり言えない。
皆に愛されてて、皆に信頼されてるあの子は、私とは正反対。
まるで貴重なものを扱うかのように、皆から扱われているあの子。
皆は優しくしているけど、私は優しくしない。
そう決めたの。
「本当に〇〇ちゃんって可愛いよね〜!!」
「全然だよ!!!!」
「本当にそうだよね。」
依存
君なら僕のことは何だって分かってくれてる。
皆は気持ち悪がるけど、君は、ちゃんと僕の話を最後まで聞いてくれる。
何をしたって僕は君のことを愛してる。
君だって、僕以外なんて要らないはずだよね。
「…」
だから君はいつだって可愛いし、愛くるしい。
今日も僕は君と話すんだ。
話しても、聞いてるだけで話してはくれないけど、ずっと僕の話を聞いてくれる。
何か聞いても、何も言ってくれないのは、酷いって思っちゃうけど、それは君が一生懸命考えてくれてるって僕は思ってるよ。
でもさ、だけどさ…
「最近なんか、やけに"冷たいよね"。」
全て好奇心
「将来どうするん?笑」
「さあ?どうするんやろな。」
小学生の頃から好奇心で動いていた俺等だから、将来について全く何もしていなかった。
普通の人だったら、もう少しで就職という時期なのに勉強も何もしていないから、普通に仕事に就けれる訳もない。
「煙草一本くれよ。最近金欠やからさ笑」
「また?ホンマに変わらへんなあ…笑別にええけどさ。」
勿論金もない。
友達のコイツはまだ親のスネをかじっていられるけど、俺はもう親に見捨てられてしまった。
「お前の事を信じていたのに…本当に見損なったよ。後は自分一人で生きていくんだな。」
別に誰も俺の事を信じろだなんて一言も言っていないのに、勝手に裏切られて、勝手に見損られた。
まあ別に俺は夢とかも無いから、将来に期待なんてしてなかった。
「どーするよ、この先。」
深夜の2時ぐらいに子供のときから来ていた公園のブランコに座って、これからの事を話していく。
「……好奇心で一回死んでみるか?笑天国とか地獄とか、噂より見てみたくね?笑」
「ははっ、お前らしいわ。その好奇心、買ったぜ?後々やっぱりっていう言葉は無しだからな?」
「ああ。」
俺等に子供の頃に輝いていた大人の姿は、このようになってしまったのか。
本当に悲しいな。
(数日後)
「最近さ、インステで生配信で自殺配信して亡くなった人が居たんだって!」
「見た見た!!高層ビルから飛び降りだっけ…?遺書が後々見つかったとき、私めっちゃ泣いちゃったよ!!」
[俺の人生は全て好奇心で作られた。
中身は他の奴等より、沢山の事が詰まっている。
子供の頃に輝いていた大人の姿は、何て残酷な姿になって終わってしまったのだろうか。
生きているときは何にも上手くいなかったし、苦しかった。
俺の死はただの好奇心。]
絶対に報われない恋心。
男同士だからだろう。
絶対に報われない恋を俺はしてしまっている。
幼馴染だった彼奴に、友達とは見れなくて、恋愛として、好きになってしまったんだ。
今日も放課後に、彼奴と教室に残って、他愛も無い話に花を咲かせるのだ。
「前にさ〜、文化祭の準備で〇〇が〇〇に〇〇してさ〜。彼奴さ~…」
俺のわからない話をよくしてくるが、彼奴が楽しそうに話していると、伝わらなくても楽しくなってくる。
この時間がずっと続けばいいのにって、何回も考えている。
昼間の時間は、胸が苦しくなってくるのだ。
彼奴が他の女の子とかと楽しそうに話している所を見ると、何も言えない気持ちになる。
「……お前はこの小説の話を知っているか?」
1つ目の話が終わって、彼奴はまた新しい話を続ける。
何を話すのかと思えば、何だかいつもと違うような雰囲気で話す彼奴。
「とある小説の話でな、主人公と結ばれるはずの女の子が、結ばれないときに
カーテンに包まって、主人公にこう言うんだよ。」
彼奴は椅子から立ち上がって、カーテンに包まり、俺にこう言ったんだ。
「花嫁に見える?」