幼馴染という呪い。
「…」
私の隣でタバコを吸っている幼馴染はカッコいい。
私達は何年ものの仲で、幼馴染だ。
保育園の頃ぐらいからで、今はお互い大人だ。
普通に仕事だって、一人暮らしだってしているような歳。
なのに、恋人は1人も作らない。
今日は私の家で、幼馴染とお泊まり(?)に近い事をした。
最初は普通に宅呑みって感じだったけど、どんどん時間が進んでいくにつれて、ぎこちないような雰囲気が流れた。
「何で恋人の1人も作らへんの?笑」
「それはお前もやろ。」
ベランダで私の横でタバコを吸っている幼馴染と、夜空に流れる星空を眺めている私。
私はそんな幼馴染に、密かに片思いをしている。
だけど"幼馴染"という言葉の呪いから、
「これ以上の関係になりたくない。」
と思ってしまうのだ。
もし、これ以上の関係になって、関係が悪くなってしまったらと考えてしまうと、前に進めない。
「こりゃ…私は、一生片思いやな。」
私が思わず、ボソッと言葉を呟いてしまった。
聞こえるはずの幼馴染は、声どころか顔の表情さえも変えずに、タバコを吸っている。
「俺も。」
ベランダから出ようとした幼馴染は、私に聞こえるか聞こえないか、微妙な声でそう呟いた。
貴方と私の記念日。
夕暮れ時の、湖が光っている橋。
ここは何て綺麗な場所なのだろうか。
目の前には、沈む太陽に照らされて、光り輝いている湖。
そして、横には私の愛する人が居る。
「私の事、好きですか。」
私が貴方にそう言うと、貴方は頬を少し赤らめた。
「何を今更言うんですか。はい、大好きです。」
貴方は私の目も合わせずにそういった。
今日は私達が付き合って、半年を迎えた。
そう、記念日だ。
「私ね、貴方の事が大好きなの。」
私がまた貴方にそう言うと、貴方は微笑んで、私の頭を優しく撫でてくれた。
「はい、分かってますよ。俺も大好きです。」
私達が付き合って、初めての時もこういう会話をし続けた。
「私ね…私、貴方の事を…愛しているの…」
私は自然と涙がポロポロと落ちてくる。
それでも貴方は、私の涙を拭ってくれた。
「分かってます。分かってますよ。だから…
死なないで。」
「えっ…」
今日は愛する人との記念日。
そして、今日は愛する人の命日。
ありがとう、優しい嘘。
貴方が私に言ってくれた、優しい嘘。
私を励ますために言ってくれた、優しい嘘。
凄く嬉しかった。
初めて言われた言葉だった。
「ごめんね。」
私が他愛もない話を貴方にしたら、貴方は私の目を見ずにそういった。
何だか、心に穴が空いたような感覚になった。
いつもは酷い貴方でも、そのときの貴方はとても温かかった。
普段言えないことを、そのときに吐いた言葉。
私はどう言い返せば分からなかった。
「何で?」
と言い返すのも違う。
本当は、私はこう返せば良かったんだと。
「私も。」
貴方だけが謝るのはおかしい、私も謝る。
だけど、それは優しい嘘。
貴方が謝った理由が、私が生まれてしまった事だったから。