#青い青い
高校1年の春。
入学してから一ヶ月が経ち、新しいクラスの緊張も少しずつ
解けてきた。
僕のクラスは男子34名で成り立っている。
そう、僕が通うこの学校は、いわゆる男子校と言われるもの
だ。なぜ、男子校なのか? 別に、僕だって望んでここを選んだ
わけじゃない。
今まで、僕の意思を尊重してくれて、自由な暮らしをさせて
くれた両親が初めて「進学校に行って欲しい」と懇願してきた
んだから、無下にするわけにはいかないだろう。
進学校とは言っても、もともと地頭が良く、学年首席が当た
り前だった僕にとって、受験は容易いものだった。だから、両
親の望んだことに自分のできる範囲で応じただけ。
それに、家から近かった進学校がたまたま男子校だったの
だ。加えて、偏差値が全国一高い。
両親は、移動時間で僕の時間が奪われることを嫌がったの
で、家に近いこの高校に進学することになった。
話を戻す。入学から一ヶ月が経った今、僕は1人のクラスメイ
トに恋をしている。恋愛対象が男だとか女だとか、そういう性
別は正直どうでもいい。ただ、惹かれた。
彼は、スポーツマンで、人柄も良く、1週間もしないうちに
クラスの人気者になる人間だ。
どんなに、僕が想いを膨らませようと、彼に伝えなければ
未来は見えず、ただ膨らんでいくだけ。別に、それが嫌だって
わけじゃない。ただ、それはそれで、虚しいというか、哀し
い。
かといって、すぐにこの思いを伝えられる勇気も覚悟もな
い。
恋は実る、そう表現することが多いから、それに当てはめ
てみると、僕の恋はまだ蕾にもなっていない。だから当然、
まだ実ることはない。これからも、どんどん膨らんでいくの
だ。
ふと、教室の窓際の角の席から青空を覗く。
4月から5月に変わったばかりの青い青い空は、僕の恋の
始まりを告げる――。
# 星
上京して一ヶ月。
慣れない人混みや音、声、香り。
就いた仕事は楽しい。
けど、どうにも人混みに慣れない。
息が詰まってしまう。
そんなとき、いつも助言をくれる親友がいる。
彼は言った。
『空を見上げてみて』
僕は空を見上げる。
瞳を開くと、そこには深く儚い藍色を背景に
無数の星々が輝く姿があった。
僕はそれに心奪われていると、
君は続けた。
『俺と君が見ている空は同じ空だ』
『君はひとりじゃない』
『不安になったり、息が詰まれば空を見上げろ』
『見ているのは俺と同じ空だから』
『無数に輝く星たちのように、俺も君も
他の星とは違って当然なんだ 』
『個性で溢れているから、個々の意思を尊重しよう
と考えるから、少し息が詰まるだけだ』
『誰も君を置いていかないし、苦しめない』
『何かあったら空を見上げろ』
その親友の言葉が僕の胸に刺さった。
そうか、僕が見ている空は君と同じもので
決して一人なんかじゃないんだ。
僕はもう一度、空を見上げて、
明日への一歩を踏み出した。
#ひそかな想い
She sits on the window.
She looks lonely.
You run she place.
You didn't wait me.
I was just watching.
The moment you hugged her.
My heart was hurting.
I wanted to cry from the bottom of my heart.
Your love has come true,
but my love has disappear.
彼女は窓の上に座っていた。
彼女は寂しそうに見える。
貴方は走って彼女のところへ行った。
私を置いて。
私はただ見ていた。
あなたが、彼女を抱きしめた瞬間を。
心が痛かった。
心の底から泣きたかった。
あなたの恋は実ったけれど、
私の恋は消えてしまったの。
失恋って、辛い…
# 輝き
君の目が、いつにも増して輝いてみえたとき、
君は恋に落ちていた。
その相手は、僕ではない。
悔しいけれど、親友として彼女の恋を
見守ろうと思った。
君が恋に落ちていることを知ったとき、
胸が苦しくて、次第に涙が溢れ出した。
僕はきづく。
ああ、僕は君に恋をしていた、
その恋も、今、この瞬間に失ったんだ、と。
とにかく、苦しくて、辛い。
でも、君にこんな思いをして欲しくないから、
全力で応援したい。
それなのに、君はいつのまにか、その目の
輝きを失っていた。
黒く、光を映さない淀んだ色をした君の瞳は
君の心情や感情を表しているようだった。
ときを経て、君の瞳に輝きが戻ったのは、
今日、この日だ。
今、僕は君にプロポーズをしている。
君の瞳に影を落とさせないと誓う。
いつだって、君の瞳の輝きを絶やさせないと誓う。
ずっと好きだった。
これからの人生、僕と過ごしてみない?
#小さな勇気
今となっては小さな勇気だけれど、
あの頃の小さな俺には大きかった勇気。
5歳の時、大量の借金を残して紛失した父親に
代わって母親がコツコツ身を削りながら、借金返済を
始めた。
6歳の時、頑張ってくれていたその母親が、
過労と精神崩壊で入院をした。
7歳の時、俺1人しかいなボロアパートに、
黒スーツのイカつい男たちが、若くて美形な男を
筆頭にやってきて、金目のものを探して家中を荒らす。
まだ幼かった俺には何が起きているのかも
分からなくて、ただただ恐怖だった。
そんな俺に優しく手を差し伸べてくれたのが、
黒スーツの男たちを率いていた笑顔が爽やかな男で
そっと俺に問いかけた。
幼い俺にもわかるように……。
「僕たちと一緒に暮らさない?」
怖かった。怖かったはずなのに、不思議と、
俺と母さんを守ってくれるような気がした。
今、手を取れば、母さんは助かるかもしれない。
でも、俺自身はどうなるか分からない。
臓器を売り飛ばされるかもしれないし、
良くないお店に入れられるかもしれない。
それでも、母さんを救いたいという思いが1番だと
自覚し、覚悟を決めて、持ちうる全ての勇気を振り
絞った。
そして、俺は、その手をとった。
数年経った今、俺と母さんは爽やかな男と
黒スーツのイカつい男たちと一緒に、幸せな生活を
送っている。
後に爽やかな男は母方の従兄弟だと知った。
あの男の家は由緒正しきヤクザの家らしく?
俺と母さんを探して、遠路はるばる、救いに来て
くれたという。
紛失した父親も探して縛り上げてくれた。
あの時に大きな勇気を振り絞れたことを
誇りに思う。
大きな勇気は今では小さな勇気に変わったけれど、
結果、母さんを救うことができて良かったとおもう。