孤都

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      # 星



   上京して一ヶ月。

   慣れない人混みや音、声、香り。

   就いた仕事は楽しい。

   けど、どうにも人混みに慣れない。

   息が詰まってしまう。


   そんなとき、いつも助言をくれる親友がいる。


   彼は言った。


   『空を見上げてみて』



   僕は空を見上げる。


   瞳を開くと、そこには深く儚い藍色を背景に

   無数の星々が輝く姿があった。


   僕はそれに心奪われていると、

   君は続けた。


   『俺と君が見ている空は同じ空だ』


   『君はひとりじゃない』


   『不安になったり、息が詰まれば空を見上げろ』


   『見ているのは俺と同じ空だから』


   『無数に輝く星たちのように、俺も君も
    他の星とは違って当然なんだ 』


   『個性で溢れているから、個々の意思を尊重しよう
    と考えるから、少し息が詰まるだけだ』


   『誰も君を置いていかないし、苦しめない』


   『何かあったら空を見上げろ』




   その親友の言葉が僕の胸に刺さった。


   そうか、僕が見ている空は君と同じもので

   決して一人なんかじゃないんだ。



   僕はもう一度、空を見上げて、


   明日への一歩を踏み出した。

3/11/2025, 10:55:33 AM