音ノ栞

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4/10/2024, 10:17:20 AM

あの……突然で申し訳ないのですが。

ちょっといいですか?

何処かでお会いしましたっけ?

……そうですよね、初めてお会いしましたよね。

あの、貴方を見た瞬間、
なんだか、昔会ったような。

遠い記憶の中、なんですけど。

……いえ、その、すみません。

今のは忘れて下さい。

……え、貴方もそう思った、って?

やっぱり、そうですよね!

私達、何処かでお会いしましたよね!

なんだかそんな気がしたんです。

誰よりも知ってるような。

ずっと昔から会ったような。

幻想、なのかもしれませんが。

少し、お話しません?

本当にちょっとだけで良いので。

……ええ、そうなんです!

私もこの松の木に行ったことがあって気がして!

不思議なこともあるんですね!

あと、ここで誰かと約束した気がして!

……ええ!貴方も!?

なんだか、運命、なんですかね。

本当なら、そんな奇跡ってあるんですかね!


・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・


とある家。

古びたアルバムにある白黒写真。

着物を着た男女が仲良く写っている。

そこには「1902年4月10日 四葉写真館にて」
と書かれている。

その見開き隣のページには、
1人の女性の写真が載っている。

傍には松の木がある。

そこには「1905年4月8日 貴方のお気に入りの場所」
と書かれている。

そして、その傍に色あせた紙が挟んである。

そこには、
「もし、僕が死んだら、
いつかの未来でこの場所で会おう。」
と書かれている。

これは遠い過去の記憶。


■テーマ:誰よりも、ずっと

4/8/2024, 12:29:55 PM

……あぁ、やっぱり来てくれたんだね!

来てくれるって信じてたよ!

あの人よりも私の方が大切って思ってくれたんでしょ!

嬉しい!ありがとう!!

それじゃあ、行こうか!

……え?どこ行くのって?

もちろん、私のお家だよ!

もう君に紹介したくてうずうずしてたんだから!

それに、楽しいこといっぱいあるからさ!!

ほら!今から行こうよ!早く!!

……え?自分はお家に帰れないのって?

何言ってるの?

だって、私を選んでくれたんでしょ?

……一旦家に帰りたいって?

何言ってるの?

もう帰れないよ???

だって、ここはもう“現世”じゃないから。

ここはね、“冥界”だよ?

……そんな不安そうな顔しないで!

私がいるから大丈夫だよ!

楽しいこといっぱいあるんだから!!

だからね、これからも、ずっと、仲良くいようね!

ずっと、ずっと、“永遠に” ね!!


■テーマ:これからも、ずっと

4/8/2024, 8:38:38 AM

こんなことになるなんて、誰が思っていたのだろうか?
ただでさえ、変なところに迷い込んで、怖い思いをして、精神的にも辛いのに。
最悪の事態だ。
なんでこんなにも化け物がいるのか。
……もう、嫌だよ。
お父さんとお母さんに会いたいよ……。
お家に帰りたいよ……。
もう足はすくんで動けない。
もう涙も止まらない。
「ねぇ、あなただけでも逃げて!」
誰かが言った。
あの人の声だ。
このよく分からない世界で出会って、一緒に行動を共にした女の人。
……お姉さんは敵を目の前にして私の方を振り返ってしゃがみこんでくれた。
「ここは大人の私が相手するから」
お姉さんはそう言って、にこりと微笑む。
「……大丈夫よ。あそこの扉を開ければきっと出口だよ」
お姉さんは続けてそう言うと、私の頭を撫でた。
温かくて優しい温もり。
それからお姉さんは咄嗟に刺繍入りのハンカチをポケットから出して私の手に握らせる。
「……もし、また会えたら、海浜公園の夕日、一緒に行こうね!…………さぁ、早く!!」
お姉さんがそれから私を突き飛ばす。
私はその勢いのまま走った。
走り続けた。
ただ走り続けた。
そして、ドアノブを掴む。
ドアを開けると、光が溢れ──。


・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・


気がつくと、海浜公園にいた。
海浜公園にはたくさんの人がいる。
「──あら、こんなところにいたの?」
後ろから声がした。
お母さんだった。
「もうすぐ夕日が落ちる頃よ。あそこの場所が夕日が綺麗に見えるところみたいよ。さぁ、行きましょう」
お母さんはそう言うと、夕日が綺麗に見えるところと指を指した方向へ進んだ。
私もそれについて行こうとした。
しかし、何故か心の中で何かが引っかかる。

──さっきまで何かしていた、ような。

記憶には両親とここまで来た思い出しかないはずなのに。
何故だか、ずっともやもやしているのだ。
ふとポケットに何かがあることに気がついた。
──刺繍入りのハンカチだ。
刺繍の名前は……私じゃない。
名前からしてこれはきっと女性の名前だ。
だけど、お母さんのではない。
何故こんなものが入っているのだろう?
「ほら、見て!」
お母さんの声が聞こえ、ふと前を見た。
今、目の前で沈んでいく夕日が見えた。
オレンジ色に朱色……さまざまな赤色に包まれた空が目に焼き付く。

──あぁ、私は誰かと見ようと約束したのに。

「──ねぇ、君。そのハンカチ……」
私の真横で私に話しかける声が聞こえた。
横を見ると、綺麗でいかにも優しそうなお姉さんが立っている。
「それ、私の、だね。拾ってくれたの?」
お姉さんがそう言うと、事情を説明する。
「……えぇ?ポケットに勝手に入ってた?何それ、怪奇現象か何か?」
お姉さんはそう言って苦笑いする。
「まぁいいや。とにかく、ありがとうね」
お姉さんはそう言ってハンカチを手に取る。
ハンカチを渡す時にふとお姉さんの温もりに触れる。
温かくて優しい温もり。
やっぱり、どこかで…………。
でも、それでも思い出せない。
ふと涙がぽろぽろとこぼれてきた。
「わぁ!?大変!あまりの夕日に感動しちゃったの!?感受性豊かだね」
お姉さんは驚いて私の方を見る。
すると、私の方を向いてしゃがみこんでくれた。
「これ、さっきのハンカチだけど……」
お姉さんがさっき私が返したハンカチを渡そうとし手が止まる。
少し動きが静止する。
「……え、この光景、どこかで…………」
お姉さんがそう呟く。
そして、数秒後にお姉さんは驚いた表情を浮かべた。
「…………え、あなた、もしかして、あの時の女の子、なの!?」
お姉さんがそう言うが、私は首を横に振る。
「え、覚えてないの!?ほら、よく分からない世界で、一緒に脱出しようとした!それにこのハンカチも!!」

────!!

ハンカチを見た瞬間に思い出されたさまざまな異世界での光景。
突然に頭から降ってきたようによぎった。
私も思い出したことを全て話した。
「ふふふ、そうよね!そうよね!!やっぱりあなたよね!ふふふ、お互い無事に出られて良かったわ!私もあれから大変だったのよね〜」
お姉さんは私の頭を撫でると、にこりと微笑む。
あの時と同じ微笑みだ。
「……とにかく、約束守れたね。海浜公園の夕日。綺麗でしょ?私が1番好きな場所だよ」
お姉さんはそう言うと、夕日の方を向く。
沈みゆく夕日を私も見つめた。
「……ねぇ、色々とまたお話しようか。今日じゃなくてもさ。ここで再会できたのも何かの縁だしね」
お姉さんがそう言うと、私は頷く。
2人でお互いを見て微笑んだ。

もうすぐ落ちかける夕焼けが2人を優しく包み込んだ。


■テーマ:沈む夕日

4/1/2024, 4:24:13 PM

自分語りですが、聞いて下さい。

私の推しが毎年エイプリルフールにSNSの名前やらアイコンやらヘッダーやら変えてくるんです。
全力で私達ファンを騙そうとしてくるんです。
彼は元々嘘が好きなタイプなので、毎年ノリノリでやってくれるのです。
私も過去に某変なCEOを間違えてフォローしたのかと思ったら推しでした。
危うくフォロー外すところでした。危ない。
今年は何になったのか。
まさかの鯖でした。
本人は鯖が好きなのか知りませんが鯖でした。
何故鯖かは知りません。
多分彼も深くは考えていないでしょう。
という訳で、今年のエイプリルフールは終わりました。
来年の推しはどんな嘘をついてくれるんでしょうね?
今からワクワクしている自分がいます。

■テーマ:エイプリルフール

3/31/2024, 5:40:19 PM

……久しぶり。元気してた?
そんな顔して、久しぶりに会ったんだよ?
少しくらい愛想よくしなよ。
私だって複雑なんだから。
あんた、昔からそうだよね。
本当に素直な人だった。
そこに惹かれたというか、ちゃんと言ってくれたから引き寄せられたというか……。
でもさ、そこが短所でもあった訳で。
……分かってる、分かってるってば。
私も短気だったって!
自覚してるよ、そのくらい。
……私だって、いい歳の女、なんだから。
私にだって悪いところがあった。
今だから素直に言える。
素直に……悪かったって思える。
別れた理由はあんただけのせいじゃないってことくらい。
……うん、分かるよ。
あの時はまだ子どもだったんだよ、私が。
少しくらい、あの時よりは大人にはなれた、とは思うよ?
……ふふふ、そんなこともあったっけね。
あんた、前よりも良くなったね。
やっぱり、今の人の方が相性いいんだね。
……良かったね。
あんたも良い人に出逢えたんだね。
……え?私?
まぁ、相変わらず、かな。
……え、何?娘?
置いて来た、というか、預けて来た。うちの親に。
結婚式に連れて来ることないからね。
まだ小さいし騒ぐからさ、多分。
……え?旦那に話したかって?
話す訳ないでしょ。こんなこと。
話したってしょうがないし、それにもう終わったことだしね。
たまたまあんたと旦那が仕事の同僚ってだけだし。
しかも定期的に呑みに行くほど仲良しだし。
私も旦那と付き合ってから知ったし、あんたと仲良いの。
もちろん、このことも言ってないよ?
今後も言うつもりない。
あんただって困るでしょ?
あんたの奥さん、泣かせたくないしね。
あの人、すごく綺麗ね。
本当に良い人に出会って良かったね。
……何よ、褒め過ぎだって?
……そうだね。
あんたに未練はないけど、あんたは悪い人じゃないって知ってるから幸せになって欲しかった、とは思ってたよ。
もう私の中であんたとの嫌なことは全て一応消化し切れたんだと思う。
今の旦那と出逢ったからね。
これからもうちの旦那と仲良くしてね。
それと、お幸せにね。
……そうだね。お互いに、ね。


■テーマ:幸せに

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