音ノ栞

Open App

あの……突然で申し訳ないのですが。

ちょっといいですか?

何処かでお会いしましたっけ?

……そうですよね、初めてお会いしましたよね。

あの、貴方を見た瞬間、
なんだか、昔会ったような。

遠い記憶の中、なんですけど。

……いえ、その、すみません。

今のは忘れて下さい。

……え、貴方もそう思った、って?

やっぱり、そうですよね!

私達、何処かでお会いしましたよね!

なんだかそんな気がしたんです。

誰よりも知ってるような。

ずっと昔から会ったような。

幻想、なのかもしれませんが。

少し、お話しません?

本当にちょっとだけで良いので。

……ええ、そうなんです!

私もこの松の木に行ったことがあって気がして!

不思議なこともあるんですね!

あと、ここで誰かと約束した気がして!

……ええ!貴方も!?

なんだか、運命、なんですかね。

本当なら、そんな奇跡ってあるんですかね!


・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・


とある家。

古びたアルバムにある白黒写真。

着物を着た男女が仲良く写っている。

そこには「1902年4月10日 四葉写真館にて」
と書かれている。

その見開き隣のページには、
1人の女性の写真が載っている。

傍には松の木がある。

そこには「1905年4月8日 貴方のお気に入りの場所」
と書かれている。

そして、その傍に色あせた紙が挟んである。

そこには、
「もし、僕が死んだら、
いつかの未来でこの場所で会おう。」
と書かれている。

これは遠い過去の記憶。


■テーマ:誰よりも、ずっと

4/10/2024, 10:17:20 AM