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12/7/2023, 12:37:09 PM

クラスで最近よく話すようになった子が、小さなサボテンをくれた。

こういうの好きそうかなって思ってさ。

ありがたくいただいたけれど、私は今までサボテンを好きとも嫌いとも思ったことがないのだった。
正直にそう言うと、大丈夫大丈夫、と彼女は笑った。
サボテンでもいいけど、多肉ちゃん、て呼んでみて。めっちゃかわいくなるから。

部屋で一番日当たりのよさそうなチェストの上に置いてみる。白く塗装された木製の、引き出しのたくさんついたお気に入りのチェスト。
ふと思いついて、かぎ針編みの小さなマットを敷いてみる。なかなかいい感じだ。

いびつな葉に、ちょぼちょぼとトゲのついた多肉ちゃん。

なんか、私みたい?
まさかね。

多肉ちゃん。

めっちゃかわいく、なるかな?

なるといいな。

部屋の片隅に置かれた多肉ちゃんは、今日も元気にちょぼちょぼしている。

12/6/2023, 12:34:10 PM

昨日はまあ、ちょっと、かなり、いろいろあった。
叫びたいのか暴れたいのか泣きたいのかもよくわからない、ただただ重い。
お酒の力を借りて無理矢理朝までワープしたけれど、二日酔いのせいではない重みはまだまだ全然残っていた。

飲も。

スマホで2文字だけのメッセージを送る。
間をおかずにスマホが鳴って、表示された文字を見て私は笑ってしまう。

13時にガストね。

きっと私は昨日のあれやこれやをぐちぐちと語るだろう。それを聞いているうちに彼女はみるみる目に涙をためて、しまいに大粒の涙を流すだろう。私は彼女をなだめながら、こう言うのだ。
「なんで私がなぐさめてるのよ、これじゃ逆さまじゃんか〜!」
彼女は笑って、そして私たちはドリンクバーを何往復もしながら暗くなるまで喋り続ける。

役割を変えながら何度も繰り返されてきた、いとしい時間。
お互いのためなら、わたしたちはいくらでも泣ける。

12/5/2023, 12:32:22 PM


ある日の朝、ジャケットに腕を通そうとしたら右肩に激痛が走った。
「いっっったぁ!!」
半端にジャケットをぶらさげたまま、肩を押さえてうずくまる。
なんだこれ。
ちょっと、今まで経験したことのない痛さだ。一応肩を押さえてはいるものの、本当に痛いのがその場所かどうかもわからない。なんだかどこもかしこも痛い気がする。しかも全然収まる気配がない。
幸い他の身支度は済んでいたので、亀よりもゆっくり慎重に、5分くらいかけてジャケットに右腕を通した。とりあえず会社に行かなければ。
歩くだけでも振動が伝わって痛みが増してくるような気がする。せめてもの気休めに、カバンをぶらさげた左腕で右腕を支えるようにして歩いてみる。腕組みをしたまま歩くのも傍から見たらおかしく見えるだろうが、この際そんなことは言っていられない。
左腕のささえのおかげで右腕への刺激はだいぶ和らいだようだった。しかし今度は右腕とカバンを支え続けた左腕に限界が近づいていた。じわじわとしびれるような重みが腕全体に広がる。カバンがずるずるとずり下がってきたが、どうすることもできない。
そうこうしているうちに、ようやく駅に着いた。
座ろう。座れさえすればなんとかなる。
祈るような気持ちで電車を待つ。

電車は満員だった。

うん。休もう。

わたしは力無くホームのベンチへ座った。

有給をもらって行った整形外科で、「五十肩ですね。」と告げられた。
わたしはまだ32だ。
そう(控えめに)抗議すると、医師は「まあ、病名なんでね〜、あははは」と笑った。
何がおもしろいんだ。

家事をする気が全く起きなかったので、帰りにおにぎりやらなにやらを買い込んだ。お財布をかばんから出すのにもひと苦労だ。エコバッグを出す時に痛みで動けなくなっていたら、見かねたレジのおばさまが袋に入れて渡してくれた。
「袋、サービスしといたよ」
若いのに大変ね、と声をかけられ、ちょっと泣きそうになって自分で自分にびっくりした。

寝る前、もらった痛み止めと湿布を貼ってみたものの、効いている気が全くしない。
上を向いても痛い。
横を向いても痛い。
そもそもうつぶせになれない。
痛くて眠れない。
「五十肩だよ」
医師のコトバが頭の中でよみがえる。
悔しい。
なんでわたしがこんな目に。
痛い。
ばか。

眠れない夜はまだまだ長い。

12/4/2023, 11:41:21 AM

小学生の頃から作家になりたいと思っていた。学生のうちにデビューして、結核かなにかの病で20代前半で死ぬのが夢だった。結婚なんてしない、車も乗らないと決めていた。

現代の日本では結核で亡くなる人は稀で、現実の私はデビューも早死にもせずに2児の母をやっている(車も運転できる)。本を読むのは大好きだけど、書くのにはとことん向いていなかったようだ。何度か書こうとしてみたけれど、どれも書き進めることができなかった。

今はパートだけれど図書館の司書をやっている。給料は安いが休みを取りやすいし、暇な時は本も読めるのでまあまあ気に入っている。…面倒なことはいろいろあるけれども。

もし夢が叶っていたら今の生活はなかったんだなぁと思うと、叶わなくて良かったのかなという気はする。