たなか。

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6/21/2023, 1:21:34 PM

【好きな色】

俺の好きな色は昔から黒だった。皆の好きな色を混ぜたやつ。戦隊モノとかでもスカしたとかじゃなくてただただカッコよくて主人公の憧れの的的なポジションだったから余計好きだった。大人になってからも一緒。落ち着いててカッコイイ色。俺の一番好きな色。

6/20/2023, 12:34:49 PM

【あなたがいたから】

あなたがいたからだ。あなたがいたから、泣けなかった。
「泣けばいいのに。」
「泣くわけないじゃん。」
本当は泣いてやりたかった。泣き喚いて声枯らして目腫らしてやりたかった。でも、そんな面あなたにはとても見せられない。私が泣いたらどんな顔をする? みんなにどうやって示せばいい。
「ハーネスだ。」
「私らのリーダー。」
「お前がいるから俺ら大丈夫だな!」
「本当にすごいと思うの!」
期待の言葉はもう飽きた。やめてよ、そんな。聞きたくない。あなたがいるときは私と二人で完璧だ。背負わせてごめん。だからこそ、泣かないよ。泣けないよ。背負わせておいて泣くなんて卑怯。
「勝手に背負って馬鹿みたい。」
冷たい缶のココアを頬に当てられ言葉を投げられる。缶を涙が伝う。泣いてたんだ。
「何が分かんの。」
「何も。お前が泣いてることしか分かんない。」
ココアを強制的に受け取らされて立ち尽くす。顔をすくめると肩を少し叩かれた。
「お疲れ様の証。」
なんで、こんなに泣いているんだろう。たかが、学園祭の出し物じゃないか。みんなが頑張って完成させた結果じゃないか。最優秀賞にはなれずに優秀賞だった。二人でいたら完璧なんてそんなことない。私は結局何も出来なかった。あなたがいたからだ。あなたがいたからみんなは私を責めないでいてくれたんだきっと。
「みんなー、泣き虫いいんちょ見つけたー。」
でかい声でクラスメイトを呼ぶ。その声に反応して人がどんどんこちらへやって来る。バレないようにと手でゴシゴシと顔を吹く。
「お疲れ様、委員長。」
「私、楽しかったよ!」
「ちゃんと道標だった。」
「やっぱりみんなですごかった!」
クラスのみんなに囲まれる。なんでこんなに優しくしてくれるんだろ。
「あ、お前らいいんちょ泣かせた。」
冷静な声で淡々と告げられるので笑ってしまう。
「なんだ、笑ってんじゃん。いいんちょ、すげかったよ。」
「私らの出番終わっちゃったけどまだ他残ってるし戻ろっか。」
ハーネスなんだ。リーダーだから。私がいるから大丈夫。みんなすごくて一番だから。最高の思い出になったんだと思う。

6/19/2023, 3:56:25 PM

【相合傘】

今日は午後から雨予報だったから傘を忘れてきた。君に入れてもらうために。
「傘忘れたの?」
「忘れたの、駅まで入れてよ。」
優しいからきっと入れてくれる。人よりは少しだけ大きめの傘。
「どうせ、家近くでしょ。自転車押して帰るから一緒に入ればいいじゃん。」
善意に漬け込んで一緒に帰る。俺が好意を持ってると知ったらなんて言うんだろう。
「自転車押すから傘持ってよ。」
「ん。」
少しだけ彼女の方に傘を寄せる。すると、すかさず彼女に「濡れるからもうちょいそっち寄せなよ。」なんて言われるから変に気なんてつかえない。チグハグな距離感で他愛もない話を繰り広げる。
「家、誰もいないしココア淹れてあげるからおいでよ。」
「お言葉に甘えて。」
でかい図体に見合わず好きな甘いもの。年々綺麗になっていく彼女。彼氏とかいるんだろうな、人気だし。考えるだけ無駄なおかしな話。
「案外、弱いんだね。」
「なんていきなりディス。」
「誰もいないから襲われるかとでも思ってた。」
「そんなことするわけないじゃん、そんなん嫌だろ。」
そこまでじゃない。でも、弱いのもそう。だって、嫌われるのが怖いから。頭が切れるわけじゃないから考えられない。
「嫌じゃないよ。」
耳を疑う。なんて?
「なんて?」
声に出ていた。
「だから、嫌じゃないって。」
ココアを吹き出しそうになる、あっつ。彼女の言った言葉に動揺しつつもいつもと同じを装う。変える気なんだ。
「好きならいいの?」
彼女が珍しく動揺している。
「好きだからいいよ。」
動揺しないわけない。

6/18/2023, 4:08:26 PM

【落下】

私の夢が落下した、希望はない。なんでだろ。なんか、悪いことしたかな。悪いことと言えばテストの点と素行くらいなんだけど。別に犯罪犯すとかそういう訳じゃないけど強いて言うなら女の子泣かせた。男の子を嘲笑った。それだけ。気になるあの子はこれでも振り向いてくれない。どれだけ悪い子になったらこっち見てくれる?
「君のこと好き。」
呟いても消化不良。想っても君は振り向かない。こっち見てよ。

6/17/2023, 4:27:55 PM

【未来】

未来ある若者に幸福を、なんて政府が銘打っていた。政治家がそれを名のもとに選挙を開催していた。俺は今年から選挙権を得る歳だ。まぁ、それも法改正前。だから、既に選挙権はある。でも、初めてなんだ。"記憶では"
起きたら病院のベッド。聞かされた話では転んで頭打って気失って気づけば一部の記憶が抜け落ちていた。いや、過ごしているはずの一年間の記憶がなくなっていた。その頃に彼女が出来ていたらしい。大学で仲良くしているやつだった。あれ、友だちだったよな......? なんて。こんな感じで日常に支障をきたす程度で記憶が抜けていた。未来ある若者、なぁ。未来あっても記憶がねぇんだ。重要な気がするんだけどな。未来ある若者には記憶が無い。

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